テキスト1967
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會t'▼この日は曇りだったが、高雄から高山寺へかけての道は、かなり雑踏していた。て北山丸太の製産地中川に入る。町並みを通り抜けて少し行くと、道がわかれて、だらだら坂の小道に入る。道にそうて流れている谷川は菩提川といい、清滝川に合流するその上流である。最近、ハイキングコースとして有名になり、腐峯まで8キロほどの山採集の花材を活ける周山街道を清滝川にそつ道は、山ふところや谷川べりをいく曲りして、いかにも京都の近郊らしい起伏の多い、静かな景色のある道である。脱峯の裏山へ出るこの道は、それへ近づくにつれてひろやかな景色となり、京都平野を下に見て、大徳寺、上加茂、京都御苑の森のたたずまいまで、地固に描いた様にながめることができる。谷川の畔で火をたき、食事をすませた私達は、今日の目的であるいけばな材料の採集にとりかかった。野いばらの花はすでに花季をすぎて、わびしいおくれ花がくさむらの中に見える程度で、これといつて花材になるほどのめぽしい材料はないが、とにかく、なつはぜ、野ばら、すすきの青葉、小松、さんきらい、野あざみ、どうだんの紅葉など、枝振りを選んで採集する。くるまのトランクに一ぱいつめ込んで帰ったのが午後3時、5時問のハイキングである。それでも新鮮な緑の木や草の材料をかなり沢山、採集してかえる早々、とにかく水切りをして、漸く葉色の回復したものから次々と活けはじめた。山の材料は、しかも新鮮なうるおいのある材料は、手ざわりも新鮮であるし、枝ぶりも自由奔放な形のものが多く、のA びのびとした花が入る。家族の4人が花器を自山に選んで、六、七瓶活けて屏風の前に卓を向直き、それへ飾りつけた。それぞれ案外とよい花ができている。「わがものと思えば」なんとか云う歌言葉にある様に、自分で採鋲した花は、花屋で買う材料とは辿った深い味わいがある。春や秋のもつとよい季節に、花の友達などを誘い合せて、いけばなのハイキングは如何でしよう。と、報告やらおすすめやらを一緒にして、短い文章を書く。ここにのせた2枚の作品写真は、そのときの花である。999写真Rは、野ばら(やしようびどうだん、野あざみ三種の瓶花で、やしようびの花は白く咲き、どうだんは緑と紅葉、あざみの浜い紅紫の色が案外みずあげがよい。高卓(たかしよく)に飾つてみると、中々ひきたつ花になった。Rは、さんきらいの実つきの垂れ枝に、ありあわせた「てつせん」の白花をとり合せて活けた。二つとも同じ様な形の蔓性の材料だが、根じめらしくないところに変化があつてよい。花器は褐色の陶器の長い花瓶゜新しい感じの花瓶である。B 4 ヽ;;-

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