テキスト1967
38/100

「及も近づく八十八夜」と小学咄歌の茶摘みの歌にうたわれるのは、立春から数えて八十八日目、大体、五月二日がこれにあたる。いわゆる晩春の季節である。桜が終ると芯葉の季節となり、春の木の花はほとんどおわり、こでまり、雪やなぎ、庭うめ、庭ざくらの様なかんほくの花が咲きはじめる。細くて昭い木質の枝に、柔い若葉が出て水揚にも注意のいる季節に入るわけである。同時にこれから草花のシーズンになり、いけばなにもやさしい草花の類や、かきつばた、花菖蒲、すいれんなど、水晩春R草を多く活けることになる。近頃は加室栽培の花を冬から見なれているので、バラ、チューリップ、百合の類など、季節の初花でも珍らしくない様になった。このごろのいけばなには、淡内な愁じのものがよく、色彩の強い花よりも緑葉の多い清爽な感じの花を選ぶ様にしたい。ほたん、芍薬などは一莉括がよく、杜芯、花菖蒲などの一種の瓶花もすがすがしい感じがする。青梱は水揚もよく、白花の牡丹、芍薬などと調和もよく、花菖蒲の紫と取合せると趣味のよい瓶花が作れる。まもなく笹百合が咲き出す°早咲きの桔梗も咲きはじめる。呑から及へうつり変りのこの季節は、いけばなにもすがすがしい美しさを作りたいものである。② 2 ①こでまり、すかしゆりを一重切の竹花器に瓶花として活けた。小さくてまりの様にならんだ白い花。大てまりという種類もあって、これは淡青のあじさいの様な形をしている。こでまりはつほみの頃よりも、白く花の咲いた頃が一ばん風情がある。足もとの若芽の葉をとり去つて、褐色の枝線を見せる様にして活けると感じがよい。この竹器は、いわゆる窓に入れる花で、左右の柱に枝葉のさわらぬ様に活ける。中央に花を入れて、低く小さく活ける場合もあり、また写真の瓶花の様に、長く花器を越えてのびのびと活ける楊合もある。窓の中に小さく、大輪の椿を小品に活けたり、寒牡の様丹な閑雅な花をひつそりと小さく活けるのも、中々調和のよい活け方である。この瓶花はこでまりの線を軽やかに高く登せて、中央にすかしゆりの淡い黄褐色と、緑の葉を前方へ傾けて挿した。清楚な竹の花器に調和した淡白な調子の花である。花器の左右のすきまを芙しくつくる様に注意する。こでまり、てっぽうゆり、淡紅椿の3種盛花である。花器は渋い紅色を交えた白地の陶器で色彩的にも美しい。こでまりの足もとの葉をすかせて、枝の線を見せるのは前の瓶花と同じ考え方で、この様にするとすつきりとして見える。こでまり、雪柳など同じ考え方で活ける。この盛花もこでまりをのびやかに胴く、前方へ傾けて括し、後方に百合を長本と括し、前方低く、花器より下がる様に括してある。百合の立体調と、つばきの垂れた枝の対照によって変化をつくつている。花器の左右をすかせて、軽やかな必じに作りあげている。く1本、中間の位骰に少し傾けて12 .... ... こでまりすかしゅり乙でまりつばきてつぽうゆり心°"'・"・・・①

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る