テキスト1966
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案いろい頭ろの雑おは記なし初冬の11月より3月の早春までは、四季のうちでもいけ花材料の水揚のよい季節である。この季節の自然の花には草花が殆んど少なく、わずかに水仙、なたね、ぎんせんか、などの他は殆んど温室栽培の花か、又は温暖地方から送り荷の草花となつている。寒い季節の花材の中でしおれやすい花を考えて、その扱い方を書いてみる。それには室内の湿度に関係があるから、まずこの点について考えてみる。まず、その草花の植生しておつた場所(露地づくり、湿室づくり)と同じ程度の、室内湿度であれば、これは最もよい状態で花がよく水揚げ、長もちする。混室の花を寒々とした場所に活けたり、特に高い暖房のある部屋に活けたり、露地咲きの草花を暖い部屋に活ける場合、急にしおれることがある。(葉牡丹、せんりようの様な強い材料でもしおれることがある)。要するに冬の草花は室内混度が高すぎると水揚げが悪い。これは急激な温度の変化が草花をしらおせることになる。専渓これと反対に温室、つくりの花に寒い風をあてると急にしおれることがあるのは、環境が急に変るために柔かい草花がついて行けないためであろう。なたねは露地栽培の花だが黄みどりの葉の柔かいものは、暖い部屋では案外早くしおれる。この場合は、柔い葉は最初からとり去つて活けるのが安全な方法である。1月より2月へかけては湿室花の最盛期であるが、バラ、テッポウユリ、スカシュリなどの様に、至って丈夫であるべき花が案外しおれることがある。これはその材料の質が不良品である場合が多く、マーガレットの葉もよくしおれるが、要はしつかりとしたよい材料を選ぶこと、室内温度をよく考えること、必ず足もとを水切りすることなど注意することである。カユウの葉もしおれやすいが、これはよほどしつかりしたものでない限り、葉は使わず花だけ挿すのが安全な方法である。総じて、ま冬の温室花には、室内温度が高すぎたり、夜問急に温度の落ちる部屋に活けたり、冷い外気にあてたりすることがしおれる原因となる。アイリスは足もとの白い部分を必ず切りとつて活ける様にする。花器の中ヘアルコールを小量入れて活けると。水揚のために大変よい。花器の水が氷つて花のしおれることがある。この場合もアルコールを花器の中へ少し入れるのがよい。太い木ものの活花材料をボクモノという。また花のあるものを「花ボクモノ」という。梅、松、木蓮、桜、椿、桃、サンシュウ、カラモモ、ツッジなどの類をいい、ことに春の木に多い。生花ではボクモノの活け方に特殊な方法があるが、瓶花盛花では、強くさびた感じの材料というだけで。特に変った考え方はない。しかし、この様なボクモノの材料は古風な感じのいけ花には適するが、この頃の明るさ新しさを考える盛花瓶花には、なんとなく古い臭味があってふさわしくない。ボクモノの枝振りの面白い、盆栽の様に見える形は、どれ程よい材料でも、活け上った後にみると、すでに過去のいけ花の様に思えて魅力が乏しい。また品格もよくない。これらの花木ものはあまり太くないものを選んで、枝振りのさびたものを活ける様にしたい。おやゆび程度の太さのものに根じめをつけて、2種、3種をとり合せて活けるのが趣味のよい配合であろう。喬木(キョウボク)1i5メーター程度以上の樹木。灌木(カンボク)ーッッジ、ナンテンの様な低く細い木ものーなどの中に、実のある材料が多い。また、ヤブコウジ、セぽくもの、実ものソリヨウの様な低い小灌木の類にも実ものが多い。晩秋より冬期にかけて木もの草もののうちに、実の色‘`つ<材料が多く、冬のいけ花材料として用いることが多い。アオキ、サンキライ、ナンテン、ビラカンサス、ウメモドキ、モチの木、タラエ、サンゴ樹、カラミヅキ、サネカヅラ、オモト、マンリヨウ、ヤブコウジ、ミヤマシキビなど、冬季には美しく色、つく。草花をとり合せて活ける好ましい材料である。今日では冬の花材に湿室材料を多く用いるが、昔のいけ花には冬の材料として実ものを使うことが多かつた。実ものを使うより色彩的な花がなかったに違いない。「立花」の伝書に梅モドキ、カラミヅキ、モチの木を選んで「実の三ぽく」と称したことがしるされている。昔の花器は、生活の器具をうつして意匠化した器物が多かった。たとえば、舟、ツルベ、ビク、野菜籠の様に°或は瓢、竹などを花器に使った様に、自然の材料を使いそれを意匠化したものが殊に多かった。伝統のいけ花はこんな花器を多く使って、花器の意匠に調和するところに風雅を見つけ出して、それをいけ花装飾として種々な工夫せ生)花かの花器井箇、タライ、を凝らしたものである。陶器の花器も耳壺、扁壺、う様な古い形のものが多かったが、最近は陶器の形もすつかり変り、新しい創作的なものが多い。生花の花器というと、伝統の花型との関係から、あまり変ったものは使いにくいが、最近は花材も自由に洋花など盛んに生花に使われる様になり、花型の創作的な生花が作られるのであるから、花器も当然、それに調和する様な花器が必要だし、また反対に新しい惑じの花器に活ける生花なればこそ、新鮮な味わいのある材料を使い、新しい花型を作る様にもなる。例えば、モンステラの様な花材を生花にした場合、当然、明るい花器が必要であろうし、ストレチア、アマリリス、アイリス、フリーヂヤなど、生花に活けられる材料が多い。その場合の花器は、形も色もそれに調和するものを選ぶことが必要である。陶器の花器の中には、モダンな形と色調のもので、生花を活けて調和するものが案外多い。陶器に生花は技巧的に活けにくい点もあるが、少し工夫すると楽に活けることがでぎる。対ペーヂの作品は、そんな感じの生花だが、材料のとり方と花型に自由な工夫を加えた、創作的な生花であり、花器の用い方にも新鮮さのある作品といえる。尊とい5 冬の水揚9

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