テキスト1966
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④さつぎの老木は紅葉して実に美しい。老幹の形が生花に適当な枝振りなので、殆どそのまま自然の形を利用して花器におさめた。右勝手の草の花型で、真、副は一本でそのまま形ができており、見越(みこし)に別の一枝を添えた。胴にサンキライの垂れた形のものを入れ、これは花器の下部まで枝を垂れさせて、サンキライの個性を活かすことと、花型の変った調子を作る様に考えた。根じめには単弁の紅菊を小じんまりとつけて、左の副の強い調子に対して、少し控え目にぐつと引きしまりのある形に作った。みづぎわは低いがしつかりと一揃いに揃つている。このつつじは、全く申分のないよい形をしており、真の上部の枝といい、右の枯枝の風情といい(内見越)完全なよい形である。花器は赤褐色の陶器で、新しい感じのデザインの花器だが、この古典的な生花が新しい花器に調和しているところが‘―つの見どころでもある。赤褐色の陶器の面へ、朱色の実のサンキライを重ねて、つつじの緑を交えた紅葉、深い紅色、みづみづしい葉の緑色の配色。この生花は赤と朱と緑の配合で作った色形的な花でもある。古典的な形と技法の中に、新しい惑じを織りこもうとする生花。また、生花のもつ気品をしつかりと守つて譲らない古武士の面影。そんな感じのいけ花である。淡褐色の幹木、菊のA B 盛花瓶花のいずれにしても、草木のもつ自然さと、その中にある風雅と、あざやかな色調。それがのびやかに表現されていることを念願とする。型にはまらない自由さが、立花生花の様な伝統の花の中にも、必ず存在することが大切とされている。ことに、型のいけ花と考えられやすい伝統生花にも、この写真の様な自然を多くとり入れた、作品を見ることがでぎる。創作的な生花といつてもよいが、伝統花の中にこんなゆるやかな作品を数多く見ることができるのである。⑱桑原専擬のいけ花は、立花生花この作品は、柳、アイリス、白つばき三種の生花で、草(そう)の花型である。花器は辰砂花瓶(シンシヤ)で深い紅と紫の交色である(陶エ、宇野仁松氏作)枯れ落ちた柳の落莫とした枝の線条を真、副、胴の位僧に垂れさせて、右の方の内副に一枝、花器より垂れた枝で悠かな花型を形づくつている。アイリスの淡紫を中央に入れ、根メの白つばきでぐつと引きしまった形を作っている。花器の口もとと花の水ぎわの一もとになったところに技巧がある。変った花器にひろやかな花型をつくりあげた生花である。4 生虹花か(A) ッツジサンキライ(B) やなき'アイリスつばき紅菊

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