テキスト1966
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春の花が自然に初冬の頃に返り咲きする、これを返り花、返り咲、あるいは帰花という°狂い咲ということもある。歳事記によると、ただ返り花とは桜のことをさし、その他のものは何々の返り花と示すことが約束になつている様である。杜若、ぼたん、くら、ぼけなどの返り咲は、いけばなの材料として、いかにも初冬らしい味わいのある花材である。たんぽぽの返り花あり憩はばやという旬があるが、静かな秋日和の中に咲<返り花は、やさしくも風雅である。冬至梅、冬椿、水仙などは十一月より咲きはじめるが、これは返り咲ではなくて早咲である。グラジオラス、テツボウユリ、バラなどの秋咲は返り花ではなくて、これは園芸による秋咲種の花の類である。返り花のかきつばたは花道では、冬のかきつばたといつて、末枯れのわびしい姿を作ることが古典で教えられており、11月に咲くさくらは「かんざくら」といつて、瓶花にも生花にも好ましい材料である。ぽけの送り花に大きい黄緑色の実のついた枝など、初冬の味わいの深い風雅な花材である。さ帰花種楽南①寒牡丹(かんぼたん)は11月より12月へかけて咲く、返り咲の牡丹で昔からある花である。自然に咲く花だが、春のぽたんと違って、なんとなく落着があり雅趣がある。床の問の小品花として、の花瓶に入れ、篭の花として調和がよい。ぼたんのことであるから、派手な感じはあるが、その中に素朴な雅致を出す様に活けるのが普通である。牡丹今日は珍らしく美しい紅色のほたんをみつけた。葉も春の花の様にたっぷりとあり、花も豊かに咲いている。寒牡丹ではあるがたっぷりとした感じに入れ細口ったりと、鉢の中へ盛り込む様てみようと、淡褐色の大鉢にゆな形に活けた。丁度、果ものを盛る様な気持で低く頭を揃えて活けたが、寒ぽたんとは思えない派手な盛花となった。②淡黄色の単弁の小菊に寒ぽたん2本を添えて、活けた。浮々とした山菊の花の美しさ、葉のみどりそれへぼたんの淡紅のたっぷりとした色。秋の花としては派手やかな美しい盛花である。ほたんの豊かさに調和するように、菊を左右にのびやかに括して、この盛花は秋のも中の豊かさを象徴している。瓶花でも盛花でも、まず材料をき2 めてその、花のもつ性格によって、褐色腰高の盛花器に花器や花型をきめることが必要である。笹百合一種の瓶花は、清冽な渓谷を思わせる様な清楚な美しさを、椿は幽静なしずけさを、大輪菊は気品に満ちた姿を、ダリアは優婉なモダン。アイリスはしよう洒なスタイルにカーネーションの軽快な美しさ、という様にそれぞれの個性を考えて活けることが大切である。さんぎく寒ぼたん14

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