テキスト1966
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松は千年の齢を保つといわれ、めでたい木とされていますが、これは長寿の太であるとともに、常に変りなき緑をたたえて、その風姿も堂々、氷雪の中にあっても色を変えぬ強さと美しさが、日本の栃木の中の第一に賞美されるところでありましよう゜松は世界各国に自生植生されており、その種類も約60種ほどもありますが、わか国にはクロマツアカマツ(雌松)ゴョウマツ松)チョウセンゴヨウ(朝鮮五葉)ヒメコマツ(姫小松)ハイマツなどがあります。クロマツは海岸に多い雄松でいわゆる白砂青松のマッ。アカマツは主として山地に自生する幹の紅褐色のメマッ。つの葉の緑青の松で、主として静岡以西の本洲•四国・九州に多く見られます。よく似ていますが、五葉に比して葉が短かく、葉色は同じ緑青色で、これは北海道、本洲中部までの北方に多い松です。ハイマツは葉短かく全体横臥の姿酪で野生するもので、主として寒帯地方の北海道、本洲東北地方の高山低木地帯に出生する松。チョウセンゴヨウは朝鮮、満洲、ウスリー地方の松ですが、国内では本州福島県以南岐阜県までの山地と、四国の一部に自生する松です。松は慶祝の芽出たい意味をもつ木として尊ばれますが、これは長寿雄壮の感じが、他の樹木にない立派さを持つているからです。中国(支那)でも、諸木の中の第一の木とされ、十八公(ヂユウハッコウ)などといつて蒋敬されております。私達は新年のいけ花として、松を活けることが多いのですが、若松、老松(オマツ、メマツ)ともに、い(雄松)かにも祝慶の花材としてふさわしい(五葉感じがします。大黄松(ダイオウショウ)というのは、葉の30センチもある異国情緒の深い松ですが、これゴヨウマツは五ヒメコマツは五葉松と殆どは洋花などと配合すると、明快な感じのするいけ花が作れます。大黄松には花器をよく選んで、モダンな感じのいけ花に仕上げることが大切だと思います。伝統のいけ花の「立花」には松を使うことが多く、「松一式」などといつて、一瓶の中に松の四季の姿をあらわそうとしたり、各種の松をあつめて、いわゆる「松づくし」のいけ花を作る形式があります。若松の生花の「みずぎわ」を紙で包み水引をかける習慣は、新年にこの芽出たい松を神々にささげる心から来たもので、根引の松のすそもとを紙で包み水引をかけて、ロに飾る「門松」の習慣も、これと同様、地の神、家の神にささげる心であります。いけ花の配合の中に、松に菩薇(バラ)をつけて「不老長春」と雅名をつけることがあります。また松と牡丹は「不老富貴」。松とおもとは「不老万年」などと雅題をつけて慶祝のいけ花とすることがあります。これは古い中国の南画の趣味から出発した意匠花ですが、そんな約束ごとでなくとも、それぞれが大変調和のよい配合で、少し古い趣味ではあるが、新年の花としてふさわしいものだと思います。若松にバラ、洋閥などをつけて瓶花盛花に活けると、明るい感じの美しい花が作れます。老松は古典的に、若松は現代的な感じに活けることのできる花材といえます。家々の入No. 37 毎月1回発行桑原専慶流松のいけばな編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専渓桑原専慶流家元1966年1月発行いけばな

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