テキスト1966
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松松若松の瓶花いが生れてくる。松はみどり,ダリアは紫紅色,花梅雨があけるといよいよ盛夏である。いけばなにもあっさりとした趣味の花を活けたい。新鮮でよい材料を数少なく入れる様にする。みる眼にすがすがしいし、花も引きたっ。緑の葉を多く入れて、その中に強い色の花を少く入れる様に考えると、清楚な感じの花ができる。濃い赤、濃い紫などの色が好ましい。黄色、オレンヂ、ビンクの系統のものはなんとなく培くるしい感じのものが多い。バラの淡いクリーム色、すいれんの淡紅などの様に、その姿の涼しげなものは自らまた別の感じである。雪柳の浅みどりの小枝、青楓を主材にキキヨウ、百合などを添えて、白磁の壺、ガラス花瓶、白竹の籠などに活けるのも、盛夏の味わい深い花といえようc花器の水をいつも新しくとりかえて、活けた花の手入れをすることが大切である。おけい古の花も次の日までもちにくい様になった。短かく切りなおして、花器をかえて活けなおすことも必要である。どの花材も活ける前に水切りをする。或は足もとを焼く。手人れをすると随分、花のもちが違う。夏のいけばなは活ける人の心が一ばんよくうかがえる季節といえる。小量の花でもいつも新鮮な花の入っているお玄関は、訪問する人達に、ほつとしたやすらぎを与えるものである。美しい8 夏花⑮ いけばなには作者の個性が出るものである。材料を選ぶとき,その人の好み,くせが知らず知らずのうちに出てくる。例えば,この松とダリア,グラジオラスの配合など,それではないかと,写真を見ながら苦笑する次第ですo若松の芽の面白さなど,これを美しいと見ない人もあるだろう。しかし。外面だけでなく,その中にある俳趣といつた感じの風雅さを,面白いと思う心も大切であろう。松にグラジオラス。これもダリアと同様,色彩的な花である。花器は暗い白色の柔い感じの花瓶。新しそうなデザインの壺だが,あまりよい形とはいえないo背が高いので花材を低く挿して,バランスを考えたoグラジオラスは淡紅色2本で,1本は高く1本は,尖端を折りとつて短く挿した。R 若若⑮ 若芽の出た松の姿には,なんとなく面白い味わグラジオラスダリアいがある。ショウプ,百合の類,菊など和種の花も調和がよいが,洋花の強い色の花も案外よくうつる。こんな傾向の瓶花を二つ,ここに並べてみた。松とダリアは全然,性質の異つた花材に見えるが,さて活けてみると案外よく調和し,また変つた味わ器は淡い褐色に黒でデザインした新しい惑じの花器だが,出来上つてみると色彩の美しい瓶花となつた。この二つは重祉のある材料だから,花器もしつかりとした安定惑のあるものを選ぶのがよい。丸い壺,広口のコンポートなどよく調和するだろう。和室よりも洋間に調和する花である。の

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