テキスト1966
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木I花のない木の枝葉、若芽の木いけばなに使う材料のことを花材といいます。いけばなは植物材料を配合して花瓶にいけることが原則となっています。最近の新しい花道では植物以外の材料をも、植物と配合して美術的な形を作る様になりましたが、一般の常識でいう「いけばな」とは、植物を材料とすることが本筋であると解釈すべぎでしよう。ところで、私達のいけばなで材料として使う植物とはどんなものをさすのでしようか、それを考えてみたいと思います。i開花、つぽみのある草花草ー花のない草の葉ー草の枯れ花、枯れ葉、紅葉I開花、つぽみのある木の花I枯花枯葉の木、紅葉の木ー実つぎの草(生のもの、枯実)実ー実つきの木(生のもの、枯実)ーつるの実、いばらの実根茎(木、竹、草の根茎の類)誌上講座2 花材の配合果実大体、以上の様に大別することができます。普通、花というと美しく咲く花を想像しますが、いけばなで花材というのは、咲いた花、っぽみの花だけでなく、四季にある多くの種類の植物の過去、現在、未来(すぎたもの、現在美しい花、これからのもの)の姿を、各方面にわたつて材料にとり入れ、植物のいろいろの姿を、花瓶に活けようとする、その材料をいいます。随つて春夏秋冬を通じて多くの花材があり、更にそれの若芽、若葉、樹木、花、紅葉、実といろいろな姿を、花瓶によく調和する様に取材し、よく選択し配合する訳であります。この様にいけばなは自然にある材料をとり合せ組み合せ、その中に形のよく調和するもの、色彩のよく調和するもの、感じのよく調和するものを選ぶわけですが、これが絵画の様に、或は彫刻の様に純粋な素材を(絵具、石膏、木など)技術によってつの美しい作品を作り上げるのとは違って、すでに形と色とうるおいとをもつ植物を、組み合せ形づくり、花瓶に留めバランスによって美しい姿と、感じを作り出そうとする、いわゆる「組み合せの芸術」ともいう性格を根本において持つています。従って、この花材の配合が、いけばなにとつてどんなに重要であるかはいうまでもありません。その人の趣味や考え方が、この材料の選択する場合に第一にあらわれて来るものです。趣味の悪い人は変なものを選ぶでしようし、趣味のよい人はほんとうの美しいものを選ぶに違いありません。更にこれが2種3種と材料を多種類まぜ合せる様になると、いよいよむつかしくなります。そして、悪い配合の材料は活け方が巧みにできておつても引き立ちませんし、よい花にはなりません。とに角、材料の配合は一ばん最初の人門のときから、最も上達した最後まで常に考えねばならぬ問題で、むつかしい問題でもある訳です。ここでは、花材の配合についてはお稽古のたびごとに考えねばならぬことだ、という点にお話をとどめて次にうつりましよう。材料の形や、その材料のもつ感じ種類などについて考えると同時に、なお大切なことは色についてであります。私逹は花の自然の色について・それが美しいものであることは、十分承知しているのですが、この花の色を見つめる心、見方については人々によっていろいろあると思います。一本の花をとつて見て、よくもこんな美しい色と、色の模様が作り出せるものだと、つくづくながめることがあります。自然植物の色というものは、単に赤、白、紫、青、黄その他の交色の美しさだけではな一3配色について.. おく、一ばん大切なことはその潤い(うるおい)であります。水々しい植物の花と葉の色の中にある光り、うるおい、これは絵でも写真でも表現することのでぎない神秘といえましょう。この美しい自然の花の色を、私達のいけばなでは、どんなに配色し、それをどの様に引き立てるかということが仕事の重要な部分になります。いけばなは自然の花色のを配合するだけだから、むつかしいものではないと考えるのは知らない人の考えることです。絵画の絵の具には時間があります。何時問かかろうと作者の頭脳によっていつも新鮮にあらわすことができますが、いけばなではある短時間に活け上げてしまわないと鮮度が落ち、やがて植物本来のがなくなります。そして大切なうるいが落ちた花や葉は、いけばなの大切な鮮度を失うことになり、花の命を失うことにもなります。いけばなは、形を作ることと同時に色調を作る仕事なのです。しかも手早く一定の時間内に仕上げることが必要とされます。従って、活けはじめるその最初の段階である、花の色彩の選択について十分の考慮が要るわけです。花を選ぶことは形と同時に色を選ぶことでもある訳です。絵画は色彩の芸術であります。いけばなも同じく色彩の芸術であります。最初、花を習ぅ頃には形を作る色.. ことに気をとられて、色の配合や、さらに色彩配合がいけばな芸術につながるものだ、などとは中々考えられないのですが、段々深く進んで行きますと、形はとにかくとして、色調の方に重点を麗くと';う様な場合が生れて来ますし、いけばなは色彩の芸術だと思う様になって来ます。この様に、いけばなは形だけでなく色の芸術だということを、よく理解して進まれることが大切なことなのです。これまで、このテキストを永く読んでいられる人は、お解りになると思いますが、作品ごとに色調の説明をしています。芸術的な高度の色調については、白黒写真では十分説明することができませんが、作品として一作ごとに作者の工夫のある色調のあることは最も必要なことであります。従って、以上に述べた通り、人門の新しい方達は、形を作る技術を習うことと共に、色彩配合について特別の注意をすることが肝要であります。花の色は単なる色でなく、常にみずみずしさ、うるおいがともなって、かがやかしい色の光をもつています。これを花瓶の中まで持ち込もうとするのがほんとうのいけばななのです。一種類の花材の場合は比較的簡単でありますが、一一種一一一種と交ぜ合せて来ますと、色彩配合がむづかしく6 盛花瓶花入門①

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