テキスト1966
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R5月の下旬から6月中旬へかけて笹百合が咲く。早百合(さゆり)ともいつて、山に咲く百合の中でも一ばん美しく風雅でもある。生花に活けてもよく、瓶花盛花にはことに好ましい材料である。一種挿に籠の投入れ、かけ花の小品花、山木の青葉の根じめとしても調和よく、また季節感の深い花でもある。秋にはきのこの香りを思い起す様に、初夏になると笹百合の風雅さを思い起す。まことに四季の花のうちでも詩趣の深い花である。笹百合には、ナッハゼ、ドウダン青楓、雪柳の青葉など、季節の青葉と取合せて二種挿として調和よく、また、紫ショウブ、キキョウ、ナルコユリ、などの草花を配合するのも軽やかでよい。水盤に笹百合を主材にスイレンを足もとに添えるのも、清爽な初夏の盛花として好ましい。自然趣味の花であるから、洋花とは調和が悪く、花器も風雅な味わいのある籠、竹器、落着きのある陶器などを用いるのがよい。写真の盛花はササユリにぎぽぅしの葉を2枚あしらった投入れである。大きくたっぷりとした平籠(ひらかご)に竹箇洛しを入れ、剣山を使ってそれに挿した。6本の笹百合を軽やかにさ.はいて、開花とっぽみを適当に配置する。ギボウシ(さじぎぽうしの葉)を2枚、前と後にさして株もとをととのえた。黒く褐色の籠に緑の下葉が重つて、いかにも新鮮に野趣の深い花となった。この籠は炭籠なのだが、こんな器を利用して花器に使うと、形も変つて見え、たっぷりとして活けやすい。前のベージに、オオヤマレンに洋花の調和のことを書いたが、笹百合には洋花はよくない。日本花、洋花とかそんな品種の問題ではなく、その材料の性格をよく見つめてきめねばならぬ問題である。ボ'き< 花器は青磁色の菓子鉢。笹百合・白菊2種の盛花である。花器でない器を利用すると、案外よく似合う場合がある。この菓子鉢は色もあっさりとしてよく、花材ともよく調和している。この鉢には大振りな花型ではあるが、のびやかに広い感じのする形である。淡紅の百合の花、黄みどりの葉。菊の白と濃い緑の葉。静かに美しい色調である。菊の葉の形と百合の葉の形の組み合せも調和よく、足もとの菓がたっぷりとみずみずしい。この盛花の形は対照型で、左右均斉の花型だが、少し左を長く右を短かく作ってある。菊の花の配列、百合の花の配列、それぞれのすきあいにも注意して活けた。(完溺)4 @ ささゆりR苔ぼうしの葉ささゆり

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