テキスト1966
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/‘ 漸く花季も終りに近づいた、庭の。ハンヂーを五、六本折りとつて、コツ。フにつかみ挿しに活ける。緑の葉が露にぬれてみずみずしく新鮮である。紫が二輪、黄が一輪、渋い紫赤の花が二輪、雑然と花を並べて、やさしくも美しい。いけばなに一ばん必要なのは、この新鮮な花のうるおい、みずみずしさである。どんな日持のよい花でも切り花となれば、およそ長もちするものではない。短い時間しかもたないのが切り花の自然である。折角、活けた花だからいつまでも長くもつ様に望むのは当然であるが、よく考えてみると、切り花が間もなく萎れて見苦しくなり、また、花をとりかえ様とするところに、いけばなのよさがあり、楽しみがある。いけばなのいのちは、ながくて一週間、二、三日、美しく見ることが出来たならば充分、という様に考えたいものである。お花がもっという考え方にもいろいろある。花も葉もしおれることがなければ、いつまでも置いておきたいという考え方と、花のうるおいが去り、なんとなくうらぶれた花は、いけばなの命がすでに消え去ったものとして、新鮮な花ととり替え様とする、そんな考え方もある。いけばなも新鮮なくだものの様に、あたたかいお料理の様に、さつと活け上つたときに、美しい味わいがあるものである。花のいのち夏の花は数時間も3 ユリナルコユリ花器に使ったのは黒漆の長方形書類箱。古くよくなれたろいろの箱。なんとなく品格がよいので花器としても面白かろうと使って見た。少しななめに置いて、後方に陶器の平皿を仕組んでおとしにした。てつぽぅ百合の開花3輪、カーネーション(洋種セキチク)3本、ナルコユリカーネーション3本を取合せたが、下地の黒い花器の上に、色彩がはえて、浮き立つ様に美しい。花型も平らに横にひろげて挿したが、これも花器によく調和していると思う。ナルコユリは便利のよい材料である。どの場合にも使いよい0うすい紅色のカーネーションを問に入れて、色彩の配合を考えた。黒い器に白‘緑、淡紅の花材は美しい取合せであると思う。3 は21枚の葉が向い合ってつくもの。1ページの話の中にあるタケシマユリというのがこれである。葉が茎の周囲にまるくついて、段になっている。植物の葉のつき万の種類に、互生(ごせい)対生(たいせい)輪生(りんせい)の三種あって、互生はたがい違いに葉のつく植物。対生輪生はタケシマユリの様にまる<輪の様に葉のつくもの、こんな区別がある。はんの木は山地に自生又は植生するもので、ハシバミ、地シバリなどといわれている。冬期に実が黒褐色4 タケシマユリはんの木になったのを保存しておいた材料。枯れた褐色の実ものだが、これに黄に少し褐色を帯びた竹島百合を添えて、瓶花を作った。籠は少し緑の残った白竹の手付きかご。たっぷりとした花器なので籠とはいえ、大振りの花が入る。ハンの木の直立した枝をまつすぐに1本前方胴に1本と入れ、ユリは中間から長く留を出して3本挿した。黒褐色、黄色、緑の葉が同色系統の配色をつくつて、渋い中に美しい色を見せている。タケシマユリの下段を切つて右前低く入れ、その上へ重ねる様に、ハンの木の褐色の実をのせかけてある。4 5 ... ...

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