テキスト1966
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透明のガラス器は、この頃から盛夏へかけて使いたい花器である。ガラス器の種類はいろいろあって、ことに近頃はプラスチック製品に、ガラス器と見違えるほど精巧なのが出来る様になり、値段も安く体裁のよいのがある。ギヤマンというと、すでに古い言葉の様に感じられるが、こころみに辞書を引いてみると、ギヤマンとはダイヤモンド、金剛石。(ガラスを切るに金剛石を用いたことから、切つて細工したものを、ギヤマン細工と呼び、さらガラス器の季節になりましたとは、ガラスを加工した芸術的な高にガラスそのものをいうようになった)。ガラスの旧称。只今の私達の常識では、ギヤマン級品と思っているし、ガラス器というと普通一般のガラス器物のように便利のよい解釈をしている。ガラス製品の工程も段々変つて来ているから、ちょうど陶器のように一品製作の芸術的な味わいをもつものと、俗に型ものといわれる一般的なものの区別と同じように考えれば、ほぽ問違いない様に思う。花器として使うガラス器はデザインの単純な形のものが好ましい0形の復雑なもの、あくどい色調のものは花との調和が悪い。季節的にさつばりとした惑じのものを使いたい。2 ①② ①コデマリとラッ。ハスイセン。これは4月より5月へかけての材料である。花器は白と黒の図案のある変った形のガラス花瓶。花器の内部は淡い黄色。花材は温和な趣味の花だが白と黄と黒と、花と器の配色が爽やかに美しい。色と花器の内部の淡黄色に色彩の調和がある。スイセンの白緑の葉が軽くつつ立ち、軽やかな惑じを見せている。壺、水盤、籠の花器のいずれにも調子のよい花だが、このガラス器に入れてラッパスイセンの花みると、特に新鮮な感じが浮び出るのは「新しい調和美」ともいえるだろう。この器は中々とまりにくい。ロもとの傾斜の状態や底の深いことなど、留めにくい条件が揃つている。丁字留(細い竹片)と竹の足つぎをして留めた。大体、こんな花器は、簡単に楽にとまる花材を選んで活けるのがよいと思う。例えばバラの色を交えて一種挿、ダリアの大輪咲3本ほど、洋種シャクヤクを首短かく挿す。洋ランにモンステラ。など主として大輪咲の花がよくうつるし挿しよいと思②テンモントウ(天門冬)キキョウ、ナルコユリ3種をガラス鉢に入れた。この花器はガラスに機械で切り子を入れた「ギヤマン」の模造品である°価格二五00円位いのガラス器だが、花器にも食器にも形のよい器である。緑の軽やかな天門冬を軽く左右にひろげて挿し、キキョウの紫と白いくまどりのあるナルコユリの葉を、南と後方に挿して盛花を作った。夏向きの花として涼しそうな感じのする盛花である。ガラス器に使う剣山は、特に美しいものを用いたい。足元のきたないのは惑心しない。剣山をはつきり見せる挿し方も軽やかで好ましいものである。ぅ゜3 コデマリラッパスイセンテンモントウナルコユリキキヨウ

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