テキスト1966
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竹はまだけ、もうそう、かんちく、くろちく、しほうちく、くまざさ、あずまざさなど、百五十種ほども種類があって、主としてアジアの多年生常緑木本である。ことに日本の自然にとけあった風景は、私達の境土の印象を一そう深くする。竹と私達の生活は、建築材として日常の用具から、趣味の用途までいよいよ深くいよいよ離れがたい関係にある。竹すだれの美しさ、竹の垣、竹の籠、ことにいけばなに使う竹の用途を考えて見ると、花器から瓶花の丁字留に使うなど、まことに多種多様の用途があって、全くなくてはならぬ材料といえる。竹のいけばな。これも多い。古典的な立花にも、生花盛花にも清爽風雅な竹を主材として、杜若、菊、水仙、つばぎなどをあしらい、また、アマリリス、テッボウユリ、カーネーションなど明るい感じの美しい色を添えてもよく調和する材料である。ことわざに「竹八月に木六月」と桑原専渓いつて、竹は八月に切るのがよいとされているが、緑の葉を賞美するいけばなには、秋より冬のうちが水揚げがよく、多くその頃に用いられる。筍(タケノコ)は五月より六月。もうそうの筍、まだけの筍、太く悠然とした姿、細くそぽくな姿、いずれも野趣があり風雅である。黒漆のかつら盆に太い筍を二、三本立て、少し荒い砂をしいて、ねじめにかきつばたや、ささ百合など添えた盛花もあざやかに美しい。百合はてっぽうゆり、すかしゅり、ささゆり、ひめゆり、くろゆり、おとめゆり、おにゆり、うばゆりなど。或は竹島百合、箱根百合、大島百合の様に原生地の地名を冠した種類もバラ、多い。竹島百合は島根県の竹島の原産の黄色の百合。竹島は韓国と係争問題のやかましいあの竹島に咲く百合で、大島百合はあまみ大島の原産。箱根百合はまた吉野百合ともタメトモユリともいい、これもその地方に咲く山百合である。ひめゆりのやさしさ。姥百合は山陰に咲く静寂な感じの深い百合である。六月に入ると笹百合が咲く。山嵌の笹野原や渓流の谷間に野生して風雅にも美しい。草山に浮ぎ沈みつ4風の百合私達のいけばなの四季のうちに、ことに好ましいのは山百合の情趣である。たかし5月の下旬のある日、友達にさそわれて、清滝川の上流へ釣に行きました。日頃、釣には興味のない私ですから、その辺は魚のほうもよく心得て、中々かかるものではありません。30分もするとすぐ嫌になつて、堤の上を少し歩いて行くと、野育ちの竹藪の中に、筍(たけのこ)が、無数に生い立つているのを見つけました。手にもてるだけ沢山、折りとつて持つて帰り、早速、瓶花に活けました。白い壺に剣山を入れてしつかりと留め、てつぽう百合を3本そえると、新鮮な季節の瓶花が出来ました。瓶花たけのこゆり百合毎月1回発行桑原専慶流網集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1966年6月発行竹No. 40 いけばな

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