テキスト1966
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猫柳は面白い花材である。ひなびた野趣があり、素ぽくな味わいがある。実を包んだ褐色の皮袋が落ちて、銀色のつぶらな実が光る頃になると、春らしい季節感を覚える。農村のあぜ道や谷川の流れに添ぅて出生しているのを見ると、なたねや栢を添えて活けると、よい調和だな、と思うのだが、また反対に、チューリッ。フやカーネーションをつけて活けると実によく調和する。和種の花を添えるとしづかな材料になり、洋花を添えるとぐんと明る<新鮮な惑じが出てくる。分量も多く活けても、一、二本、少<挿してもそれなりの深い味いが感じられる。生花の材料としても重宝だし、盛花瓶花にもよい。全く便利重宝な材料といえる。これは枝の形からくる感じと、銀色の実の色からくる感じとが、全然ちがった持ち味をもつているからだろう。これによく似た材料を考えてみると、この頃、山で深い紅に色づいている「山百日紅」ヤマサルスベリ、これはどこの山でもあるかん木だが、これも洋花によく調和する。なんてんの葉の落ちて実だけ残ったもの。これは葉のあるうちは平凡な材料だが、冬も終りの頃、葉の落ちつくしてまつ赤な実が、柱頭に残った姿は面白い。アイリスをあしらい、テッポウユリなど混室材料と取合せると中々美しい花ができる。も仏くさくなるが、花だけとつてみると、花の形といい、花軸の形といい、中々、モダンな形をしている。これにカラジュームの葉をあしらったり、サンキライの緑の実などをつけると殊に面白い味わいがある。これらの材料はいずれも直線的な美しい線をもつている。この形が明るく新鮮に感じられるのだろうが、また、その他にススキの穂、けいとう夏の蓮の花。葉をつけると如何に猫柳、南天、ハス、山サルスベリ、の花など日本的な味わいもあり、形と色の中に明るい新鮮さを惑じられる材料も多い。これは、習慣的に花を見るのではなく、その花材の形と色と感じを、別の見方によって新しい発見をすることであって、創作的ないけばなを作ろうとする場合に大切な考え方といえる。洋花というと、どれもが新鮮味がある様に一般的に思われやすい。和種の草木や野生の材料は、日本的な古い趣味、しずかな趣味の様に思われやすい°材料をよく見つめて考えてみると、案外、その中に洋花にない新しさを発見することができるものである。合は、調和しない様に考えられるガ、ごらんの通り、対して、軽い曲線のフリーと軽さとの対照によって調和が生れているのである。重いもの二種、という様にしないでこの盛花は椋のむらがりに対して、あしらいは軽くさわやかな調子にフリーヂヤを挿してある。花型も変つて見えるし、のびのびとした感じがする。フリーヂヤの白花と洩みどりの葉。椿は紅色の花と黒々とした緑。白黄のふ入り葉が美しい。花器は淡青磁の小型菓子鉢゜フリーヂヤを中央に入れて、前後に深く椿が入っている。上品に明るい感じの盛花。つばきとフリーヂヤの配しつくりととけあっている。これは椿の群りの葉にヂヤの業が形の上で、強さ雪柳にフリーヂヤ。椿にはぽたん。といった様に、それぞれが軽いもの二種、フリーヂヤ緋おとめ椿猫やなぎ

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