テキスト1965
78/82

jし立冬から立春まで、即ち11月7日頃から2日4日頃までが冬である。一年のうちで、最も寒く日も短かく、草は枯れ樹は落葉し、沼や川も涸れ氷つて、野も山も枯れ一色の爾条たるさびしさとなるが、その閑寂な沈潜した美しさは渋く奥深い。11月は初冬、12月は中冬、1月2月は厳冬となっている。この歳時記のしめす様に、いけ花でも11月の花と12月の花、1月より2月初頭までと区別を立てて考えると中々興味が深い。11月10日前後になると庭の山茶花が咲き出し、寒ざくら、水仙など冬の花が見られる様になり、紅葉のいけ花など、11月のいけばなは静かに趣味の深い花が多い。12月に入ると菊は衰え、寒菊の種類が黄、白、紅など色を交えて咲き出す。12月のいけ花材料は秋花の名残りの花と、返り花のいろいろ、また一方で混室の花が咲き出す。10日をすぎると、花屋もあわただしく新年花の準備にとりかかるので、特に12月の花として、特徴のあるものが少い。いけ花で、12月と1月は材料に大きい変化がある。1月に入ると、完全に冬の自然のわびしい枝ものを活けることとなり、あおき、なんてん、おもとなどの実もの、水仙、なたねなどの冬の草花。また、それとともに温室花の最盛期に入る。12月はいけ花の冬への衣がえをする季節である。十二月(秋桜子歳時記)12月RテッポウユT3本、探い赤色のサンギ●を配合した盛花である。花器は長円型の腰高水盤°明る<美しい盛花である。ュリが2輪開花しているので面白い調子に活けることができた。白百合の花を同じ方向に並べる様に挿したところがこの盛花の特徴であろう。中央の前方へっぽみを入れ。この百合の3本で花型の調子を作り、その右方と左方ヘ高低をつけて山菊を入れた。新鮮で花葉の美しい山菊を長く使って、さらりとのび⑧帯化柳(タイカヤナギ)とさか柳、へら柳ともいう。白大輪菊と挿し合せたこの盛花は晩秋の感じの深い花である。柳の枝線を前方においてそれを通して花を見る様に考えて挿した。柳も菊も上方へのびる立体(りつたい)の花型で、花器は土器様式の三角型水盤である。こんな場合、柳の線が複雑な自然のままの姿で立てるのがよく、形にまとめると平凡な惑じになる。大輪菊の花とやかに挿した調子。白、緑、深赤の配色が美しい。みづぎわは菊を左方に低く入れて、花型のしまりをつけ、右方は軽く百合の足もとの見える様にすきまを作った°菊と百合の傾斜と配列と、そのすきまの広いところ、狭いところ、前後の深い奥行ぎ、それらがこの盛花をつくり上げている。材料をよく選択して、さて活けるときには、つとめて軽くさらりとした味を出す。短時間で作れる美しい盛花。大きい葉はたっぷりとした惑じなので、この程度の直味のある花器でないと調和しない。三角型の花瓶の隅を美しく見せて、株をまん中にまとめて活けたが、花器の内側を見ることができるし、花型もよくなる。三角型の花器は角を前にして活けるのもよく、平面を前にして活けてもよい。帯化柳は面白いものだが使い方によつては下品な姿になりやすい。趣味のよい花を活けたい。B A 4.. .-.

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る