テキスト1965
77/82

R朱色の実のサンザシ、水仙、ツバキの三種瓶花である。ッバキは対。ヘージのつばき小菊の盛花に使った枝をそのまま使った。花器は濃い褐色のまるい壺で焼しめという。この三種の瓶花は渋い好みの落着いた花で、和室の静かな感じの部屋に飾ると調和がよい。この三種は枝線のまばらなサンザシ、丸葉の多いツバキ、ぞれ形と性質の違った材料を配合している。花材の色数が多くなるにつれて、それぞれの形や色、感じの違ったものを合せると活けよいし、でき上りもすつきりと見える。例えば対ページのツバキ小菊の様に、葉の二つとも茂ったものをとり直線の草花スイセン、それ合せる場合は、その相互の葉色や二つの材料がこみ合わない様に、適当なすきまを作って、活け方のエ夫をする。またこれと反対に例えば、ナンテンに水仙の副材の場合、調和のよい材料だが足もとのすき合いに、特別な注意と技巧がいる訳である。活けやすいのは線のものに面(葉の様に)の多い材料をつけることである。この写真のサンザシ、ツバキ、イセンの三種はそんな意味で代表的な配合といえるだろう。同じ様な取合せを書いてみよう。サンキライカーネーション菊ユキヤナギハナショウブバラ梅ツバキスイセンR白花のボケと淡紅の一重咲ツバキの2種瓶花。花器は赤褐色の土器様式の陶器。低いが口も広く安定感のある壺である。細いボケの枝線に対して、葉の群りのあるツバキの配合は、上の三種瓶花と同じ考え方で、形と色彩のよい調和である。また、花型の作り方も、軽やかな材料はかなりひろげて流暢な感じに活け、葉と花のどっしりと重い感じの材料は、低く安定させて活ける常識的な行き方である。ただ、大輪菊、てっぽぅゅり、大輪の牡丹、しやくやくなどは、何れも重い感じの花材だが、その花を引き立てるために、かなり長く活ける。つばきはどの場合でも大きく高く活けると品格が悪い。これは花のもつ個性ともいえる。この写真をみると、ボケは左右の上方にひろがつて、のびやかな花型をつくり、下方は左に低くボケの枝一本、これで形のしまりを作っている。(胴)この瓶花はツバキの花型が変つている。前方低く開花を入れ、右の奥深く枝葉をならべて根じめとしては面白いつけ方である。この様に副材の作り方によっては、全体の調子に変化をつけることになる。この瓶花は主材のボケもひろやかな形をもち、根じめのツバキも、これに劣らない独立した形をつくり上げている。そして、この二つの花材が相寄つて、安定した構成をつくつている。年11の花道は花材のもつ外面的な形立花(りつか)の写真をみて、つの作品の中に随分多種類の花材を使うものだな、と思われるに違いない。これでも少い方で多いのは20種ぐらい交挿するのが普通である。ところで、立花の中で梼をつかう時は必ず水際(みづぎわ)低い位置にさす様にぎまつている。高い場所に使つてはいけない、ということになっている。考えてみると、つばきは低い位置に挿してこそ形のよいもので、殊に短かく安定感のある見せ方が、つばきの花葉を最も美しく見ることになる、その考え方を計算して定めたものだろう。おもと、しだ、小菊などもみづぎわ低く使うこととなっており、これは材料の性質上当然と思われるのだが、水仙、かきっばたの様な低い草花は上位に高く使うこともよく、低く使ってもよいことになっている。や惑じだけではなく、その花のもっ品位(花の格)を定めて、上に使うとか下に使うとか定めたものであった。水仙、かぎつばたなは下草だが花格としては大関に位するという意味で上に使う、といった調子である。ところがこれで統一しているかというとそうでもない。おもとはロlln位の高い花材であるが、その形の上から考えて前置(下部)に使うことに定つている。大変複雑であるが、考えてみると、花材の性格を考えてそれを最もよく引き立つ用い方を定めている訳である。ス一3 AB サンザシスイセンボケツバキツバキ花が格悶

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る