テキスト1965
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Rつばきは単弁の淡紅色、副材は淡い褐色の単弁小菊。二種の成皿花である。花器は赤褐色の陶器で口辺の切りこみが変った水盤。つばきは小品の一種挿が一ばん活けやすく、静かな感じがしてよいものだが、また、梅もどき、さんぎらい、梅、ぽけなどのあしらいとして活けるのも調和がよい。しかし、この盛花のように棒に他の材料をつける場合は、よほど注意しないと失敗することが多い。つばきの主材にとり合せる材料がむつかしい訳だが、特につばきは大きく活けるほど形のとりにくい材料でもある。この写真のつばきは、右方にのびた上の枝と下へさがった枝に、自然の変化があり、中々よい枝振りである。つばきの形の中に適当な「すきま」を作って、ことに菊との間のすきま。このあたりに花形をよくする考え方がある。つばきの葉の涙緑と菊の葉の浅みどりの葉。これにも色の区ぎりを考えてある。A c (りつか)りぎりにこの写真が着いた。中々面目い作品なので予定を変えて組み入れることにした。従って花材のはつきりしない点もあるが、大よその批評を書いて見る。大変よくできた作品で技巧的には全く申分のない佳作である。全体をみると技巧の優れたところや、いかにも元気てはいの作品であるが、風雅とか軽妙とかいった境地とは異つた作品といえる。どの芸術でもそうだが、まず技巧の全く完全な作品を理想として作るのだが、その上に更に軽やかに格調の高い境地に至ろうとする。実に対する虚の美しさをあらわそうとする。日本画、能その他の例をひくまでもなく同意である。この作品は優れた実であって、更にその上のゆとりのある雅致に及ぶことを期待したい。c12月号の編集を終ろうとするぎ上野淳泉作品2立花椿[⑧ 紅葉のなんてん4本に白椿をあしらつた瓶花。花器は土器様式の広口花瓶。実際では色の美しい花材なのに,写真では平凡な作品にみえる。このつばきは白玉つばぎではない。花のやや長い普通の白つばきで,花器の広口の形に対して,つばきをたつぶりと使つてある。この様な広口花瓶は,口いつばいに花葉を入れないで,一部分をすかせて花器の内部の見える様に活けると,上品な感じに見られる。なんてんは頂真副胴控の基本の位置に入れ,つばきは前から右方の留の方ヘ,また後方深くやや高めに一枝入れた。B

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