テキスト1965
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初冬の立花桑原専渓りつか最近、私は京都で催されたある美術展に立花を出品した。日本画、洋画、染織、書道その他の作品の中に、花道の出品もあって、よくまとまつた気持のよい展覧会であった。その二、三日、私は仕事やその他の予定が重なって、少し無理だったのだが、準備日のその前の夜、八時頃からとりかかつて午前四時までかかつて、とにかく、責任を果す気持で作った立花であったが、ては案外、よい作品ができ上った。5圧ぐらいのやや小品的な立花で、・ができない。今日のいけ花として鑑五葉松、水仙、さんきらい、白玉棒賞し得る様な新しい立花を作ることの四種を材料に使った除真(のぎじが大切なのだが、それがためにはこん)の立花である。写真でご覧の通り、花器は赤褐色練が必要である。そして伝統的な形の新しい感じの壺で、かなり背が高の中に新鮮な感じのある作品をつくいので、花型とのバランスや、安定ることが大切である。惑などに注意しつつ作って行った。五葉松は一一一本を合せて、なるべく自的ないけ花は形式が定つているもの然のままに、あまり手を入れない様だから、便宜的にそれに乗っていつに組み合せたが、木そのものの形がたり、その型にとらわれたり、形をよかったので、これは短時間に作る作ることに汲汲としている程度でことができた。立花というと古典的ないけ花と思材料の自然を活かすことは到底でき自分としわれやすく、作る人も形式にとらわないものである。れやすいので、のびやかなよい作品伝統のいけ花であるから、定ったれに対する正しい理解と、永年の鍛これは当然なことなのだが、伝統は、澄測としたいきのよい作品や、形式のままというのは、全く考え違いで、常に今日現在の私達の美術をつくる心を、その作品の中に織り込むことが大切である。生花、瓶花盛花や新しいいけ花造形の場合も同じことだが、なにしろ自然草木を材料にして組み立て、作り上げることが殆んどなので、材料のもつ形やくせ、色をどう活かすか、なまの植物であるから時間的に制約があり、かなりの短時間に手早く仕上げてしまわねばならぬ、という条件があって、結局、平素の勉強がものをいうことになる。水仙の立花は「五一色」といつて、杜若、牡丹、楓、松の一色挿しの立花とともに、伝統的にはかなり厳しい約束が定つている。水仙一色はすそもとに「小菊又は寒菊」を添えることに定つており、これが古典なのだが、今日ではそれにとらわれることはなく、水仙立花のやり方を応用して、配色と趣味のよい他の草木と組み合せて活ければよい、ということになっている。水仙の葉には針金をさし込んで用いる。これで自由な形を作りあげる。葉先などに曲線をつけることもできるわけである。花形は真、謂、副、流枝、控、正真、胴、見越、前置、留など枝の配置が定つているが、よい作品をつくるためには、これにこだわらない。適当に省略し枝の前後深浅や、すきまの形を考えて、作者の個性のある花型を作って行く。この立花では、真と請の五葉松、見越をさげてサンキライ。副、流枝の水仙、正真より胴へかけて水仙、胴と前置の白つばき。以上の配合である。材料の自然の姿を活かして、風雅な惑じに仕上げる様に注意した作品である。請、No. 36 毎月1回発行桑原専慶流唸や、.編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1965年12月発行いけばな

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