テキスト1965
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11月に入ると晩秋の色が濃くなり、いよいよ初冬の季節がはじまる。中旬をすぎると豊かな菊も段々と姿をかえて渋味を増す様になる。時雨の中に咲く菊は葉も硬く紅葉を交える様になって、まことに風雅を感じられる。小菊山菊の色の深く美しいものが咲き出し、瓶花盛花の材料として好ましい。ことに早咲きの寒菊のっぽみのまだかた<緑の多いものを、籠の投入花として一種挿とするのも、一入、初冬の詩趣を感じられる"O紅葉はすでに終つて山の樹木も街路樹の黄色も、すつかり落ちつくして落菓の想いが身に礼みるのであるが、その中に新しい冬の花を迎える私達の心の中に、新鮮な季節惑が涌き上つてくる。いけ花には、落葉のあとの木々の枝を主材に残菊を探えて活けるのも中々風雅であるし、梅もどき、さんきらい、さんざし、つるもどきなどの実もの、ざくろ、柿、ぽけ、棒、きささげ、山藤の実など、この季節には実つきの山木の類、その他に面白い姿のものが多い。早咲きのつばぎの類いろいろ、寒桜、寒牡丹、ぽけの返り花など季節感の深い花である。寒ざくらに紅菊、ぽけの花に黄菊など雅趣の深い配合である。水仙が咲き出し、おもと、せんりようの実が色づく。今年もはやばやといつしか冬の季節になった。カーネーション・テッポウユリ、アイリス、バラなど湿室の花を活ける様になってくると、お花の値段も高くなってくることだろう。この年末は花代も相当高くつくらしい様子だが、なるべくお手やわらかに願いたいものである。褐色に枯れた木の葉を活けるのも中々面白いものである。黄葉の残った木、すでに褐色の枯れ葉に、みずみずしい緑の葉と色の花を探えたいけ花は季節感もあり、中々美しい。落ち葉などを花瓶に挿して花を探える。そんないけ花も中々楽しい。A A がる対照型で,この様な広口花瓶B を選んで(緑褐色),柿ののびやかな枝, .. 糠9ヽ~B. 柿どうだん大輪菊柿は実のあまり多くない方が風雅である。さんざし,梅もどきなどの実ものも,実のあまり多くないまばらに枝のすいた程度のものが好ましい。実の多くついたものが美しいと思うのは俗つぽい考え方である。この瓶花には大輪菊(白)をつけた。柿の感じが重いので中菊では軽く見える。これも対照型で重みのある花器を左右にはり出して活けたo晩秋より初冬へかけての季節惑の探い瓶花といえよぅ。横はりの形に対して奥行もかなり深く作ってある。大輪菊はこの様に頭を揃えて活けると力強い感じに見られる。どうだんの紅葉と柿はよく調和する。ヽ會, f .. 朱色に少し緑を交えた紅葉に白中菊の瓶花である。花器は褐色の広口花瓶oどうだんの紅葉と白菊は晩秋の花材として風雅に美しい配合である。菊も大輪を使わず上品な形の中菊を選んで副材につけた。たつぶりした緑の菊の葉と紅葉が重なり,や入黄ばんだ菊の白がしずかに落着のある色調をつくつている。この花型は左右のひろには対照型がよく調和するし,また実際,活ける場合にも活けやす紅棄をいけるどうだん中菊 し'o疇唸→釦` ` _~'_,'"'~ ― 6

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