テキスト1965
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ヒマの葉が落ちて紅色の茎に残った褐色の実。山地の水辺に咲く沢桔梗(サワギキョウ)の紫の花。山菊の淡黄と渋い紅色。この四種類の配合である。花器は白く濁った色の新しい感じの広ロの花瓶。直立した草花に山菊を根じめに使った盛花であるが、これは直立した立体(りったい)の花型で少し前方へ傾いている。ヒマの紅色の茎が美しく、これに褐色、紫、淡黄、紅などの色が交って色彩的に美しい盛花である。中央にすきまをつくつて、山菊は右にたつぶり左は軽く挿して形の変化を考えてある。これも色彩の花で白黒写真では惑じが出ないが、花型としても変った形である。前後を深く奥行をずつと後方に控に褐色の実が1本入っており、前へは沢キキョウが1本浮き出て、軽やかな感じの花型となっている。変調な花形であるが和種の花材を明るい形に活けた盛花といえる。これはカークリゴと白菊、紅山菊3⑦⑧種の盛花である。花器は長方形褐色陶器で、花器の小さい割に左右へひろがりのある花型である。カークリゴは南アフリ力原産の植物で、和名ではオオセンボウ(ヒガンバナ)科という。軽やかにのびた仙線の葉を左右に対照的に使って、中央に白菊を4本(上部2本、下部2本)を配列、前方低く紅山菊を入れ、右方の後方にも小童さしてある。この盛花は緑の長いカークリゴの葉をのびのびと挿して、低い花型、横ひろがりの花型。そんなところに特徴のある形を作ったのだが、出来上ったところではそんなに変つているとは思えない。対煕型のうちでも花器に比較して左右に長くのびやかな形という程度である。の葉と4本の白菊の配置の中に工夫のある花型である。4枚7 カークリゴヒマサワキキョウ臼菊紅山菊サンギク雪柳、アカシャ、ナナカマド、ホトトギスの様な材料に菊をつける様な形式は、特別の場合をのぞいてはまず平凡ということになる。ぎまりきった形の材料では、変った形のいけ花は作りにくい。思い切った花形、新しい感じの花形、個性のある色調のいけ花は、材料を集める時、すでにそれが成功するかどうかが定るものである。つまり、材料の選択をよくしないとよい花が入らないということである。いけ花のけい古は、ただ花型をつくり、留め方を習うだけでなく、それは一部分の練習にすぎない。花のもつ感じをよく知り、その配合を理解し、色調を研究し、そのいけ花から、一つの香りのある様な個性美のある花を、度重なる練習の中で活けつづけて行きたいものである。度ごとのおけいこ花を充分選択して正しい勉強をして欲しい°趣味のよい美しいいけ花を活ける様にしたいものである。5 R ⑮ a

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