テキスト1965
61/82

新しい惑じの花を活けるには、どんなところに注意すればよいのだろうか。それにはまず、花器花材の選択が大切である。花器花材を目の前に置いたとぎ、大体の結果が定まるーといえる。それには形と色調と感じがあるから、それをよく考えて取合わせ、さてそれを活ける場合には、材料の形をどんなに花器に立てれば新しい花形になるかを考える。副材との組み合せによって、形の上にも色彩の上にも、どんなにも感じをつくり出すことができるのだから、このときがてはん大切な瞬間である。この場合、基本花型は忘れてしまうことが必要である。定った型にならない様に注意しつつ考えつくる様にする。Rの盛花。花材はサンキライとリンドウの2種。サンキライ(山帰来)は別にサルトビイバラ(猿飛いばら)ともいい、また所によってはいろいろ呼び名のある野生の山いばらである。11月に入ると実が赤くなりいけ花材料に中々好ましい材料である。この写真のものは昨年採集した保存のものだが、やや黄ばんだものと赤紅色に色づいたものが交つて中々美しい。リンドウは長野県より送り荷の品で花は青く美しいが、形がまつすぐで強く感じがかたい。その中で少し間のある茎のもの選んで、この2種の材料を盛花とした。花器は薄ずみ色の湿和な形の腰高の水盤。山地の花材2種の配合である°色が美しく強く、たっぷりとした感じなので2種で仕上げたが、写真になってみると、中央の後方がすいて見える。実際の作品ではすき合いなど気にならないほど、豊かであったのだが||。これは色彩を抜いた白と黒では全然ちがうものとなった。この写真の花なれば後方の控に緑の葉ものを一種、加えた方がよいと思っている。また、この盛花の中で、左方に出ている(副)の位置のサンキライの実と茎は、ない方がよい。この茎と実はむしろこの盛花の形を悪くしていると反省している次第である。しかし、たっぷりと使ったサンキライの茎と実は全く美しい盛花であった。34 ④の瓶花は、ススキとケイトウ、サンギクの3種である。ススキは青菓のうちは(カヤ)といい、穂が出てからはススキと呼び、穂は尾花ということになっている。このケイトウ(鶏頭)は茎が帯状になった種類で帯化鶏頭(タイカケイトウ)という。閑柳やエニシダの中にもこの様に平らになるのを帯化するといつて、これは植物の変種で、その他の植物の中にもあり、使い方によっては面白い味わいが見られ、また下品に見える場合もあるので使い方に注意することが必要。たっぷりとした備前焼のグレーの色の壺は少し褐色の焼きが見える。季節には少し早いススキと紅色のたつぶりとした鶏頭の花軸。紅の花頭。それに白花山菊の一一一種瓶花である。これは花器がゆったりとしているので花材も重量のあるものがよく調和し、ススキの様にひろがりのある材料ものびやかに入れることができる。爽やかな秋らしい感じを出そうと考えて材料を選んだが、色彩的にも美しくその惑じのよく出た作品だと思っている。この瓶花はケイトウ2本の配置が重点で、これで花型がきまる訳だから、最初にケイトウを入れ、その形を考えた。花器の中にしつかりとした剣山を入れ、それに留めてから、ススキと山菊を入れた。足もとをすかせて軽やかに見える様に作った。山菊を左方によせて入れ、賠頭の紅色の茎がよく見える様に考えて活けた。3 サンキライリンドウススキ帯化ケイトウサンギク

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る