テキスト1965
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か一‘‘R茶褐色の手つき籠、この籠はしずかな趣味のかごだが、やさしい草花がよく調和する。日本種の花がよいのだが、写真の様な洋種の材料もうつりがよい。カラジュームの葉3枚、夏咲の菊3本の小品花である。白と緑のさつばりとした配色。わかりやすい様に右勝手の基本型に入れたが、この籠には少し堅い感じがする。(初級の花)。中筒に斜十文字のくばり木をかけ、カラジュームは真、副に2枚、留に1枚入れ、菊は胴、中間、控の位置に3本さした。籠の手がよく見える様に活けることが必要。A ⑧ユキャナギとオニュリの投入れである。オニュリの小型の種類をコオニュリという。オレンジ色の百合と黄みどりの雪柳の配合が美しい。白竹の荒目の籠(末広かご)がざんぐりとして、軽やかなこの材料によく調和する。籠の花は写真Rの様に手よりも低く活けてもよく、写真Rの様に手よりも高く登る様に活けてもよい。高く花材を活ける場合は軽やかな材料でないと調和が悪い。籠の手の前方だけで形を作ってもよく、また、このオニュリの様に手の後方へ入れてもよい。この花型は応用花型で、柳は真、副、胴と中間の一部へ入れ、オニュリは中問と控に高く2本、留に低く1本挿した。籠の花器も種類の多いものである。昔から中国には籠つくりの名家が多いし美術的な名作が残されている。日本では伝統的に形の定った籠が数々あり種類も多く複雑だが、今日、美術展に出品される様な籠の作品から、実用的に用いられる籠の類までまことに多種多様、美術品と実用品。まことに範囲の広いものである。ボルネオ、スマトラなどの南方原住民の籠にも目をみはらせる様な精巧なものがある。まことに種類の多いものだが、私達がいけ花に使う場合に、これを大きく区別して、次の様に考えるのがわかりやすい。①中国様式の籠。精巧な技法で雪R4③ 洋風趣味の籠゜造られた籠で、編目もこまかく古風な様式をもち、重厚な惑じがある。(例えば牡丹籠の様に)色も黒褐色のものが多い。茶道によく使われる、ざんぐりとした野趣風雅な趣味の籠゜これにも種類が多い。自然風な雅趣のある籠で、(例えば宗全籠、末広籠の様に)色つきのもの、白竹のものなど種類が多い。俗に荒目の籠といわれるものもこの中に入る。花器として寵のお話でなく、手提籠の様に実用的な籠だが、この中に形のよい、色の美しいものが多い。塗料で着色したもの、ビニール製品、金属で編んだもの。これを応用花器として用いる。中々範囲が広いし花との調和もよい。④台所用品の籠の類。買籠.野菜籠、菓子その他食品を入れたあき籠、いろいろ利用できるものがある。大体、以上の様にわけることができるが、特に花道のために作った籠というものは、昔はいろいろあったが、最近においては殆どない。花道に籠を使うことが少くなったためであろう。江戸時代から明治へかけて、籠の名作が多く作られた。精巧な編目の大ぶりのものを、花道にも多く使われて牡丹籠の様な大きいものに、しつかりとした流俊花を入たれ絵図が残っているが、この時代には銅器にも重厚精巧な作品が多くあり、立花などの威厳のある花を活けて、よく調和するどつしりとしたものが多かった。籠の花器にもその様な力強さがあったのが、その頃の形式であった。今は、籠花器に対する考え方がすつかり変つて、清楚幽静、風雅で軽やかなのが籠のいけ花、という様に変つて来ている。もの'-の花B

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