テキスト1965
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①この手提籠は河原町の御婦人のアクセサリー屋にあった籠°値段は三五0円。安い割合にスマートですつきりしている。新しいうちにお花を2回ほど活けたら、あとは差し上げますという手軽な籠。②これも河原町の民芸屋にあった籠。沢山ある中からまん中のへこんだ、形の面白いのをよこの花器はり出して買った。(一、000円)③備前焼の壺°渋い色だが形が面白い。口もとが斜に切つてあるところ、少しキザつぼいけれど、新しそうな感じがある。活けやすい花壺。(一、五00円)④これも備前焼。形は新しそうだが、焼上りの色がよくない。外見のぎれいでない壺。嫌いな壺゜(一、五00円)3 山藤の実と朱色のバラ4本、これも剣山に留めてある。藤の実は茶褐色に色づいた形のよいものを2本、高く入れて前斜に実の垂れる様に真、胴と入れた。バラを左方の副の位置へ1本挿し、藤の線を通して軽やかに見える様に。右方のバラは胴、中間、留の3本である。花器は褐色の扁壺(へんこ)で渋い中に明るい形の花器であり、藤の実と殆ど同色。バラの葉の緑と褐色の調和、朱色のバラの花。美しい花である。葉をとり去った木の枝や実つきものに、花と葉のたつぶりとした副材を添えると、いつの場合も配合の美しい瓶花盛花が作れる。藤の実には(菊)(ダリア)(グラジオラス)(女郎花、桔梗)などの花がよく調和する。④この花器は濃い藍色の壺で、ロもとの切り込んだ少し新しそうな工夫のある形である。こんな口もとに形のある花器はなるべく、口辺をかくさない様に活けるのがよい。材料も直線の草花、例えば(グラジオラス一種)(アマリリス一種)(花菖蒲一種)の様に、る様な材料ほど、この花器を引き立てることになるだろう。姫ユリの朱色とタマシダの緑の葉2種を瓶花に入れてみたが、花器のロもとのあたりが少し見ぐるしい。花器の切りこみの中へ葉が入りこんで無理なところがある。出来上りの美しい花ではあるが、まずまずというお花。百合はテッポウユリでもヒメユリでも、開花がまじつている方が花型もよく、美しく見られる。全部口もとの見え4 材料は日持ちが悪いのですが、ここで考えたいのは、夏のいけ花は花器も小さくして、分醤も少<挿し、たえず新しい花ととり変えるのがよいということです。大変手数が要りますが、簡単に活けられる様な小品花を次々ととりかえる様にすると、いつも新鮮な花を家庭に飾ることができる訳です。お稽古の花材は技術の勉強のために一定の分量が定つているので、そんな感じにならないと思いますが、例えば庭のムクゲやアサガオを毎日きりとつて、かけ花や小品の置花に入れるという様に、或は、通りがかった花屋で新しい花を一、二輪買つてきて軽い投入れに挿すという様にすると、家庭にもお客様のためにもよい感じを与えると思います。夏の朝、庭の花を切りとつて活けるという様なのは理想的ですが、都会ではこれも難しいことです。農村や効外にお住居の方は是非そんな夏の花を手軽に挿して下さい。大きな水鉢に水をいばい汲んで庭に骰き、それへ草花の美しい花を挿しておくと、案外よくもちます。強い夏の賜ざしをうけても、風をうけても、雨が降りかかつても、室内のいけ花よりも日持ちがよろしい。これは植物が太陽の光と水で生活するものですから、その条件に合うわけです。夏期の飾り花として適当です。7 ③

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