テキスト1965
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の山地に野生するツルモノで、渋い紅色をしているのでこの名がある。ポピーはひなげしでこれは早生の種類、花、茎とも弱々しいが水揚りのよい、モダンな惑じの花である。花器は緑褐色の陶器で腰高のコンポート゜この盛花は普通の湿和な感じの花ではない。紅ヅルの渋い紅に、ポピーは淡黄色とオレンヂの2色をまじえて一とかたまりに足もとを束ねてさしてある。紅ヅルを折りまげて左に入れ、右にボビーを入れた。細いツルに細い草花の配合だが、この細い材料2種で、はつきりとした惑覚的な鋭い気持ちが、この花の中にある様に、そんな考えで作った花である。出来上つてみると色もかなり美しく、渋い好みの中になんとなく一とくせある感じの、変ったも(No.17)ベニヅルは東北地方茎はのになった。勿論、こんな種類の盛花は基本型のことは考えないが配合するとぎ普通でない何か意欲的な考えが必要なのである。さて、出来上ったこの盛花を、どこかに飾りつけることを考えてみよぅ°床の間には調和が悪いが、和室洋室のいずれでも、少し調子の変った装飾のある部屋に置くと引ぎ立つと思う。前衛絵画の額をかけ、それに添えて、こんないけばなを飾ったら面白いと思うのである。(No.18)ラッパ水仙、なたね、スイトピーの三種の草花を盛花に活けた。ラッパスイセンを上部に入れ、なたねを中央から左前の胴の部分に入れ、スイトピーは右の方の中間と留に入っている。スイトビーは濃い紅色で、ラッパスイセンは淡黄。この三種の草花がくつきり、色をわけて配列されている。花器は褐色の陶器の水盤で、手附の強い感じの花器である。なたねは3本で、胴の位置へ2本と、スイセンの後の方へ、ずっと控えて1本入れてある。スイトビーは15本程度を二つにわけてマッス状にかためて、前右の下部と、その後ろ右に二ところに挿した。色彩の美しい盛花で、きわだった色のわけ方に特長のある盛花、といえる。スイセンの葉を軽く配列して、下の花と器の重さやかたまりに対して軽い空間を作ってある。真、副、胴、中間、留(左勝手)など、基本型に花材を配置しながら、はつぎりとした個性をもつ盛花である。は間違いない。少しかわいてから切りとること。これは注意した方がよい。夏の花は露のある時間に切りとつても差支えない。夏の花は水分が短時間で蒸発するから、むしろ水分の多いほどよい。ただし、四季を通じて雨中に切った花は水揚が悪い。葉の紅葉する性質の小葉のひきしまった落葉樹は総じて、露のある時間に切ると葉が落ちやすい。少しかわいてから切るのが安全であるc春の花のうち、マガレット、ストック、都忘れ、ボタン(草部)など、草花の足もとの硬いものは、熱湯に切り口を10秒程度、かるくつけてすぐ冷水にうつす。コデマリ、ユキャナギ、利休梅の様なかんぼく類は足もとをたたぎつぶして活けるとよく水揚げる。さらに薄荷油につけると一層効果がある。さくらが終つて木々の若葉が出はじめると花材の水揚が悪くなる。木ものは若芽若葉が弱いし、草花は柔かく、季節の湿度が高い関係から吸水力が弱まる。一般的にはいえないが、注意のいる季節に入る。すでに――一月にはコデマリやサッキバイの様な五月のかんぽくの花が見られるが水揚の悪い先頭部隊である。ュキャナギの様な材料でも自然咲の頃になると、水揚が悪くなる。不必要な若葉をとり去つて活けるのがよい。形もすつぎりするし、褐色の枝線が見えて美しい。11 17 18 ベニヅル花材ポヒ°―花材ラッパスイセンスイトピーナタネ

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