テキスト1965
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形である。「高杯」こうはいというとりあわせることは普通の様になっているが、この。ヘージの2作の盛花の様に、木ものと洋花をあわせる場合、よほどしつくりと調和する材料を選ばないと‘―つのものにならない。ビデューム(淡い褐色)、、マーガレットの三種盛花である。やなぎは広がる形なので、前後に枝を出して、前方では花の前の枝を重ねる様にして用い、後方はずつと深く枝をのばして、左方(No.13)N013の写真は、やなぎの枝にシン洋花と日本種の材料をはできるだけひろげない様にして形を作った。洋蘭は花の引立つ様に茎のさし方を考えて、長く胴の位置に挿してあるが、かなりたっぷりとした大ぎい花軸であるから使い方をよく考えないと引ぎ立たないことになる。マーガレットの葉の美しいものを選んで中央に2本挿したが、この盛花は洋花でも落着きのある材料であるから、芽の柳とよく調和して和室にもよくうつる花となった。(No.14)木の枝は山百日紅(やまひやくじつこう)、洋蘭のシンビデューム、ストックの一ー一種盛花である。山百日紅はどの山にも見られる低い木もので、地方によってはいろいろの土地の呼び名がある。山百日紅とは風雅な名前で中々感じがよく出ていると思う。枝の色は濃い紅色で秋から冬にかけて色が美しい。この盛花の花器は黄褐色でかなり大きくたっぷりとした形で杯は盃(さか‘‘つき)という意味である。蘭は渋い黄緑色でシンビジュームにしては細く花数も少い。ストックの白花八重咲はどつしりして葉も豊かにひ花材・山百日紅ろがつて安定感がある。広い水盤の中にたっぷり水をみたせて、みずぎわの美しい盛花である。百日紅の枝を後方と前方の二たところにわけて挿し、前の枝は花の前へ挿して、枝を通してランやストックを見る様に配置した。この方法は、上の写真(ヤナギ、ラン、マガレット)と同じテクニックで、花が奥深く軽やかに見える方法である。他の材料でも応用されるのがよい。花器が伝統的な落着のある形なので静かな色の花材とよく調和して、洋花でありながら、日本的な気品を出している盛花といえる。むづかしい技巧のいらない出来上りのさえた花といえるシンビデュームストック岩鏡は山地に野生する短い草の名である。10センチほどの長さの葉がむらがつて、葉の形はほぽ心臓型。葉の質は硬く光沢があり、晩秋より冬にかけて美しく紅葉する。花は六七月頃に咲くがこれはわびしく小さい淡紅色の花。高山植物にという花があって、これも背の低い木質の植物だが、いわかがみはこの「岩梅科」の多年生の草である。岩梨(いわなし)というのは、これも短い七、八センチ程度の山草だが、これは二月一一一月頃、淡紅色の小さい花をつけて風雅な味いのある花である。滋賀県の江若鉄道の沿線に北比良という駅がある。下車して比良山の方へ向つて2キロほど歩くと、比良の裾野の高原地帯に出る。この辺一帯はいわゆる「比良つAじ」の原生地帯で、つAじの群落にまじつてこの岩かゞみが、見渡すかぎり野生している場所である。荒い砂地の丘に緑葉、紅葉、緑と深い朱色に染めわけた岩鏡の葉が群つて、その中に岩梨や春蘭の株が点々と野生して、私達のいけばな材料の豊かな自然の花畑である。岩鏡とはよく名づけたもので、岩や砂地の場所に、強い光沢をもつ葉が光つて、全く岩をうつす小さい鏡葉といえる。盛花の材料としてよく、また立花の下草に使うと気品があって形もよく、中々いいものである。いわかがみ「岩梅」青—~,13 花材・やなぎシンビデュームマーガレット14

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