テキスト1965
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種いけにするのが普通である。ボタンに洋種の材料を添えるということは、あまり考えつかないと思う。ボタンを少し感じをかえて活けてみようと、エリカをあしらつてみた。ボタンの葉や花がばらりとした大味な感じであるから、エリカの様なこまかい花をつけて見ると、案外、面白い調和になった。色彩的にもあまり離れた色の取合せでなく、エリカの淡紫色とボタンの淡紅色、菓の白緑とがよくとけあつて。しつくりとした配合になった。これまで、ボタンに洋種の花をつけ(No.11)ボタンは壺や籠に一花材・ボタンエリカるなど考えなかったので、新しい発見をした様に思った。花器は淡緑色のどつしりとした水盤で、厚手な惑じがボタンとエリカのどつしりとした形に調和している。写真でみる様に、水盤の内部までエリカの花か群り入っているが、こんな深い水盤は、花器のふちから内部へも花葉を沈める(美しい技巧で)様に入れておくと、花型も変つて見えるし、深くたっぷりとした花器を合理的に使っていることにもなる。(水につからない様に)(No.12)ベニヅルの暗褐色、ストレチアのオレンヂ色、バイモの浅みどりの花。この性格のちがった――一種の材料を配合してみた。花器は淡緑色の流れくすりのかかった壺である。ばいもという草花は、茶席の小品花にでも活ける様なしずかな花で、洋花でもことに変つているストレチアなどと調和するとは考えなかったが、さて、この三種を合せてみると思いがけない花が出来た。ベニツルは花屋では一束にたばねてくくつてあるので、それをほどいてみると、形のよいツルがほとんど花材・ない。仕方がないので長いツルをまん中から折りまげて、両端を壺につつこんで見ると、こんな形になった。一、二本はずれたツルで形をとつてその前ヘストレチアを一本さし込んでみると、いけばならしい形になった。こんな材料を一本一本と神経をつかつて揃えては大変だから、時としてこんな横着なさし方をすることもある。その後、足もとにバイモをつけて形をととのえた。ベニツル、ストレチア2種で数を多く挿すのもよい。花器が少し高い様に思う。今少し低い花器がよい。ベニヅルストレチアバイモ洋花と洋花、日本種の花材もそれどうし、と考えられやすいが、決してそんなに考える必要はない。上図の写真2枚は、その極端な例を見るために作ったいけばなであるが、ボタンの様な花材と、エリカの様な花材をとり合せても、案外調和する場合がある。洋花の多いこの頃であるから、山の草木にカーネーションやラッパスイセンをつけることは、普通の様に考えられているが、ただ、ここで考えて欲しいことは、洋花が多く出廻つて、ただなんとなく和種洋種の花材を配合する、という消極的な考えでなく、和花洋花をとり合せて、なにか特別の感じをうみ出す様な、配合上の創作的なあらわし方をして欲しいと思うのである。例えば、エリカとボタン、一寸、奇異に見える様なこの配合はボタンの静かな味わいを、別の新しい味わいへ持つて行くことができるーーという様に、その他にいろいろ工夫があるに違いない。(N014)の写真、洋蘭、山サルスベリ、ストックの盛花の様に、山の渋い紅色の木と洋蘭の淡黄色とが落ついた調和を見せている様に、案外なところに、別の調和があると思うのである。洋花と日本花との配合7 ヽ11 12

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