テキスト1965
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いけばなを活ける私達は花屋さんとは切つても切れぬ仲。どうしても花屋の御厄介になる。ところが、花の買い方というものは中々むづかしいもので、また気持のよい花屋さんというものは中々少い。昔から、花屋など、ぶあいそうで変屈な人が多い。ただ、ものを売るというだけでなく、技術的な仕事をするというところに特殊な。フライドがあるのであろう。しかし、お客の私達には難かしい商人は困るし、ことにいけばなの材料は、画家の絵具の様なもので、よい材料が手に入らないとよいお花が入らない。そこで「花の上手な選び方、買い方のコツ」が必要となって来る。まず第一に気持のよい花屋さんを選ぶことである。よく売れている花屋。ということは常に新しい花が入れ替つているということでもある。ここで商売に立ち入った話になるが、花屋さんが市場で仕入れるとき、大部分の商品が同じ品ものの中に、(カットは桑原桜子)植木屋、菓子屋、竹屋、一級二級三級という様に品質のよしあしが定つており、それによって仕入価格が違うということになる。私達が化屋のウインドウをながめて、この店の花はいつも新鮮でよいお花が多いというのは、一級品の仕入であるに違いない。よい質の花をいつも仕入れる花屋。そんな店をみつけて買う習慣をつけるのがよい。私は花屋へ行くと、いきなりすぐに店へ入らないで、店の外からウインドウや店の中をつくづくとながめて、自分の気に入った花があるかどうか、今日はどの花にしようなどと考えてから店へ入る。考えが定らないのに店へ入るのはよくない。ほかの品ものを買うのと違つて、私逹の材料は買うときが、そのいけばなのよく作れるか、どうかの定るときである。したがつてよい加減な気持で買うのは嫌である。さて店へ入ってカーネーションを買う。二本欲しいときは五本出して貰つてよいのを二本選ぶ。はじめから二本下さいと云うのはへたな買い方です。どの材料でもこの様にする、花屋のすすめるのは雑音と同じ場合が多いから、自分の思うままに選択する自信をもちたいものである。質の悪い花3本よりも、高級の花ー本を買うのがよい。その方がよいお花が作れる。大体において主材はかさが高い割に値段の安いのが普通。根じめはかさが低いのに値段が高くつく、花屋さんはかさがあって値の安そうなものをすすめ様とする。。草花2種は花が美しいが結局たかくつく。水仙バラ、菊カーネーション、テッポウユリにスイトビーという様な組み合せは美しいが高価である。かさが低くとも美しい花を活けたいのは誰れも同じだが、そこのところを上手に選択するのが買いものの技術。ばらんは大葉も小葉も同じ値段なので欲ばつて大き菓だけ買つて来る人。これはお花になりません。花の買いものは趣味の品ものであるだけに中々むつかしい。花材を上手に買える人は必ずお花も上手に活けられる人である。花屋に嫌がられない様に要領よく好きな花、よい花を選ぶ、これが大切である。花屋の店へ行くのは夜が一ばんよい(京都)。市場から品ものが帰つて勢のよい新しい花が店に整とんされた頃、見に行くのがよい。よい花が買える訳である。花屋の休日(京都では日曜日)の翌日には新しい花はない。電話で注文した花には自分の思う様な材料は先ず入らないと考えてよかろう。どうしても花屋まかせの材料で辛抱することとなる。そんなに神経質に考えなくてもと思うのだが、よいお花を活けようと考えるのだったら、自分から出向かないとどうにも仕様がない。大切に花を活けようと思うものにとつては、花材は単なる花屋の商品でないはずである。ことに花の色などはそのものを見てこそ、配合が考えられるのだから。花屋へ行く前に花器をきめておくことも大切である。あの花器にどの花を活けようという気持で花屋へ行くのがよい。とりあえず気に入ったのを買つて帰つてどれかの花器に入れようと思うのは、余程、沢山花器をもつている人のすることである。勿論、新鮮なものでないと買わないこととする。花屋には迷惑かも知れないが大体、枝ぶりや花葉の調子を選んで買う。花や莱にキズがないかどうか、あの部屋にうつるかどうか、そして必要な分始の少し多いめに買う。値段の高い花が必ずしも好ましい花でもないが、気持のよい花を選ぶときは、値段のことはあまり考えない方がよい。結局その方が安く仕上る。私は、このテキストの写真をうつすとき、多忙な中の一日をみつけ出して、の朝から正午頃まで京都中の一ばんよい花屋を10軒ばかり、走り廻つて材料のよいもの、なるべく季節の先きの花を選んで、どつさり買い込んで来る。午後から夜12時頃まで、次から次へと活けて写真をとらせ、作を一―-、四種ずつ写して二十数瓶を写し、それを全部手札版に焼かせ(約七十枚)その中から十二、び出し、更にこれを中版に2種ずつ焼かせ、その中から最後の十二、枚を選んで、翌月のテキストに掲載することにきめている。写真屋さんと打合せする。そ三一三枚を選(専渓)花屋と私

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