テキスト1964
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まばらに残った赤い実のウメモドキ2本、淡紅のバラ4本の瓶花である。花型は副を長く真の低い形(副主型)である。胴のない花型でこれは略した花型で(応用花型)である。花器は新しいデザインの黒色と土色の陶器で、渋い感じのウメモドキをバラの根じめと花器の新鮮さで、明るく見せようと考えている。ウメモドキは、山菊をそえ、白つばきなどを添えて、静かな趣味に活うめもどぎ・ばらけるのが普通だが、こんな配合で明るさを作るのも―つの行き方である。この花型は単調な花型だが、美しい色彩であること、ウメモドキを明る<活けようとするところに特徴がある。左方のウメモドキは前斜に強く出ており、真の枝はずつと後方に入れて奥行をとつてある。11月末より12月へかけて初冬の味わいの深い瓶花と云えよう。バラはこの場合、白色よりも淡紅の方が配色がよい。濃い緑の莱と黒色の花器の色とがきわだった美しさを見せている。洋蘭はデンフォーラと云う紫赤の種類。テツボウユリは咲いた花、中開のもの3本を選んだ。花器は土色の陶器で三つの足の形と、まるい彫りのある装飾が新鮮な惑じを見せている。緑は百合の葉だけで写真では足もとが淋しく見えるが、実際では蘭の色が強くて中々はなやかな盛花となっている。二つの材料は温室咲のもので、これから冬へかけて段々と混室の花を使うこととなり、そのさぎがけの花とも云える。この盛花は全体がモダてっぽうゆり・洋蘭ンな調子の花で、洋間の棚へ飾るとよい調和であろう。花型は中央に真。右方に胴。左方に中間の3本を入れ。またそれと同じ調子に蘭を3カ所に配置してある。足もとをすかせて活けてあるが、軽やかな感じに見せるためである。花器が深く前後にせまいので、足もとがすつかりかくれて、水ぎわも美しく見ることが出来る。この盛花は真、胴、留の百合3本が基本型にはまった形なので、少し堅い惑じなのだが、百合と聞がそれぞれ三角形の形を作って、それが重なっているところに特徴のある形である。今年もまた歳末を迎えることとなった。年末になると揃つて新年の花を入れる。平素からよい花を活けているのだから、特に新年だと云つてあらたまった花を活けることもないのだがと思いながらも、さて年末になると迎春の気持の方がそわそわして、あらたまった花を活ける様になる。しかし、新しい希望の年を迎えるのだから、いけばなも気持を新しくして少し儀式めいたいけばなを活けるのもいいのではないかと思う。ことに平素は活けない特別の場所や、新年だけには使いたいと云う花器もあって、自然、数多く活けることともなるし、いよいよ多忙ということとなる訳である。大体12月は一年中でも一ばん花の少い季節でもあり、年末になるとどの家庭でも一せいに花を活けることとなるので、材料費が普通の3倍程度まで高くなる。しかし、質のよい花は半月ぐらいは、結構美しく見られるから、他のものに比較するとそんなに高いものでもないと思う。中途半。はな悪い材料は美しくもないし日持ちも悪い。上級品はかなり永くもつて気持がよい。分量は少くとも上等のお花をお買いなさい、とおすすめする次第である。2 迎春の花冬のはじめの花を活ける12月のいけばな

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