テキスト1964
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10月28日から11月3日まで京都御所の各御殿を会場として華道展がひらかれた°京都市、報知新聞社、京都市観光協会の主催、参加流派十五流であったが、御所の一般公開の日と一緒だったので、七日間の参観者二十二万余と云う、京都御所としてこれまでにない多数の入場者があって実に盛会であった。歴史のある御所の建造物と古雅京都御所華道展な庭菌、紫痰殿の廻廊や、各御殿に大作のいけばなが飾られて、全く調和のとれた催しであった。桑原専渓の作品は、御常御殿に高さ七尺、横七尺、奥行六尺余の大作の松一式立華と廻廊の大瓶花2作。この写真は美しい庭圏を前にした御常御殿の立華である。御所の門を入るとコンクリートの市街風景とは全くはなれて、雅びやかな古典調に包まれて、清浄な感覚一ばいのよき日々であった。これは室町時代の風俗、花包みの花をもつて贈りものにする女の姿である。女と云つてもこれは尼僧で、こごうしののしめの着物をきて、帯は女帯と云う前結びのものつける。おりふしの花を紙に巻いて水引をかけ、贈りものにしようと立ち出でた姿である。能狂言の中に「若市」と云うのがあって、その中にあらわれる美しい尼僧の姿。下の写真右にある花包みを持つて主演するのだが、勿論、花は造花でなくて、季節のなまの花を紅白二色の紙で包む。薄紫の被衣(かづぎ)をかぶり、まことに優えんな姿です。セロファン紙にガーベラの花を巻いて、ネッカチーフを風になびかせながら街を歩くこの頃の御婦人の姿と、いささか時点は違うが一脈通じるものがあります。贈りばなの昔の姿を御参考までに。茂山先生の御厚意に依つて、御社中水野貞子さんの舞姿を拝借しました。はなづつみ8 花の焦点3J 曰菫x x

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