テキスト1964
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スイセンをスイセンらしくいけるには、いけばなの古い型式でもある生花」をお手本にすればよいが、型にはまつたお花には生気と自由さが失われる。そこでその技法の一部を借用していけたのがこの作品。ふつうの和種の白スイセンは葉が長くしつかりしているが、ねじれてなかなか思い通りにさせない。しかし主要なすいせんをいける桑原素子葉の二、三枚に針金を入れると思い通りにまがる。もめん針ぐらいの太さのまつすぐの(朝日新聞から)針金を、葉の長さより少し余分に切り、先端に小量の綿をまきつける。この先を葉の切「立花」や「おり口の葉脈のまん中に剌し、徐々に葉の先に向つて入れて行く。それは思ったより簡単に葉の中心を通つて葉先まで楽らくと剌し込むことが出来る。この葉を作っておぎ、花器の用意が出来たら、先ず第一に花を花器の中心にスックと立てる、花器はあまり深いものより水盤型のものがよい。和種のスイセンは花が多いから、咲ぎすぎた花をとり去り、つぼみを残す。この作品では、花軸は3本、葉は8枚で、左方のまがった葉3枚が針金入りである。足もとをなるべくまとめ、水ぎわをスッキリさせる。下部に黄色のラッパスイセン4本をそえて色どりをそえた。水盤は白色の陶器。スイセンは気品のある冬のスイセンである。気品を保ち、スイセンらしくいけるのはむづかしいものである。黄と緑の入り交ったクロトンの葉、オレンヂ色のバラ、白色単弁の山菊3種の硲花。花器は木製の新しいスタイルの花器である。(婦人生活写真)専渓おやじ殿と娘の作品を二つならベてみた。そして自画自賛の短評を書いて見る。娘の方は朝日の写真だから、意欲的な新しい作品をと張り切つて作ったいけばな。おやじの方は婦人雑誌のいけばなだから、なるべく家庭的な花を考えて作ったのだから、そこに相当のへだたりがある。さて、それぞれの写真を見ると、素子の作品は古典的ないけばなの方法をとり入れて、新鮮な感じを出そうと考えているのに対し、私は新しい若々しい材料を使って、出来上つた作品は至極おとなしい盛花である。この二つのいけばなはそれぞれ、よく出来た完成した作品だと思うのだが、それぞれのねらい所が違うと最後にはこんなにも、異った惑じになるのかと思うと、中々面白いし、また楽しい。年令の差と云うことも考えられるが、私達の場合はそんなものにとらわれない心の用意がはるはずである。おやじ殿の作品、バラの盛花は豊かに安泰°完備した技巧。娘の水仙はするどい切れものの味わいがある。老成と新鋭の対比ともいえる。いけばなを考える人達の必要な二つの極点であろう。(専渓)自我自評4 秋の盛花新鮮と完備

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