テキスト1964
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3老)4ら、—この瞬間は伝統生花のうちの三重切筒(さんじゅうぎりづA)の花である。三重切は殆んど竹で作られているが、稀にはビンロウ樹、舟板、陶器などで作られているものもある。この花器の切り方もいろいろあって、窓のあけ方も変化が多い。上中下の三つの花型がよく調和することが大切であり、花型の大ぎさも大中小に配合して、バランスをよく考える。老松つばきほととぎす真の花型、行の花型、草の花型をとり合せることに定まつているが、この図を見ると松ー副草の流型し、)行の型、ほとときす一普通つばき(真の型)このつばきの入れ方は前方へまつすぐ出す。図では右へ出ている様に描いてあるが、これは前方へ出る心である。これを窓内の真の花と云う。三種の材料は、草木の形趣味色調などを配合よく考える。3 細い美しい線をもつ木ものである。茶褐色の細い実、黄ばんだ葉がまだらについて、11月頃に風雅な姿を見せる。好んで茶花に用いられる。白つばきとの調和がよく静かに落着いた味わいがある。瓶花にもよい調和となる、二管箇(にかんづA)は竹を二本長短に切つて組み合せた花器で、本用いるのを三管筒(さんかんづ4)と云う。伝統生花のうちの意匠的な花器であって、活け方は大体、二重切箇と同じ様な考え方である。上管(じょはしばみつばき一――うかん)と下管(げかん)に活ける花は、大小の形の組み合せ、左勝手と右勝手の組み合せ、花材の配合については、色彩的にも、趣味的にもよく考えてよい調和を作る。この図では、はしばみを右勝手の行の花型に作り、つばきは左勝手の草の花型に活けてある。また、はしばみは技巧的な正統の活け方、つばきはくだけた自然趣味的な活け方をして、バランスをとつている。二重切筒、三重切箇の生花、また二管箇、三管筒の活け方は殆んど共通したものがあって、それぞれの花器の上中下の場所へ、風雅な趣味と花材の配合、色彩の美しい様に、意匠的な取合せをする。花型を二つ三つ配合する訳でもあるから、作者の考案が必要となって来る。4 花の名を心に描きながら、その花を見ると、いよいよ深い情緒を味わうことが出来るし、その名の起る所以をも想像して、一入深い感興に入る。姥百合(うばゆり)の幽静、為朝百合(ためとも)の強さ、笹百合(さAゆり)のさわやかさ、鬼百合(おにゆり)の朱紅の色。みなそれぞれの姿と心を表現して面白い、椿のかぐら(神楽)妙蓮寺(みようれんじ)卜伴(ぽくはん)雪箕なザきみの)散姫(ちりひめ)荒獅子(あらじし)初嵐(はつあらし)太郎庵(たろうあん)など、歴史と人物をあらわす呼び名も面白い、その花の形を見、花色を見て名を考えて見ると一層深い惑興を覚える。そこで皆さん。花を見るとき、その名をしみじみと考えて、よくその花を見つめて御覧なさい。藪つばぎを見るときは、竹藪に交つて咲く赤い花のつばぎ、恐らくその近くには烏瓜(からすうり)の実も色づいているだろうー|などと想像して、そしてその椿をお活けになることをおすすめする。女郎花は広原のくさむらを、連想してその名の来る由縁を考えたならば、お花はもっと楽しくなるに違いない°活けた花を静かにながめながその花を考えるーいけばな、の拙いわざも、上手も全く別のことであるに違いない。いけばなの風雅はこんなところにもある訳である。7 三重切筒の生花二管筒の生花

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