テキスト1964
84/104

花器は黒色陶器の四角の花瓶である。背が高いが黒色の花器はどの材料でもよく調和する。壺が高いので垂れる材料を選んで花器の前へ枝の重なる様に考えて花型を作った。サンキライ(山帰来)サトイモの花(里芋)白菊の三種である。菊とサンキライで十分の配合であるが、少し異色な感じを作るために、サトイモの花と云う変った材料を挿し合せて見た。黒色の花器の面と菊の葉の浪緑が大部分を占めているが、形としては4 下部のサンキライが主役である。この下枝に依つてこの瓶花の特徴が生れることとなり、作者の意図も生れることとなる。サンキライの枝が曲線でなく、斜に直線を引いているところも、少し変つているではないか。サトイモの花は面白い材料だが、こんな材料は悪趣味になり易い。この場合、ひと役はしているが、すれすれと云うところである。とに角、この瓶花は、花型が変つている。花器が特殊なものである場合には、特徴のある材料をあつめてその花器を嫌味のない活かし方をしたいものである。4 栗の実とテッポウユリの二種瓶花。花器はややモダンなデザインのある褐色陶器。花器が明るい調子なので、花型も左右にひろげて、のびやかな形に作つて見た。百合も長く挿して前へ出る花、後方の花と二つに分けて入れ栗は左右へ長く形を変えて、また前方後方に小枝を短かく入れて花型の引きしまりを作った。空間の多い花だが,それなりに別の味わいを作っている様にも思う。この一一種の花材は大変調和のよい5 5 材料で、普通の壺にも、水盤に入れてもよい花になる。この写真にある花器は、決してよい花器ではない。デザインに気ざつぽいところもあるが、それだけに若さも感じられる。こんな系統の新しそうな花器が、花器屋へ行くと相当多く見かけられる。買うときによく注意しないと、変なものを買うことになる。しかし、多くの花器の中にはこんな傾向の花器が一っ二つあって、気軽な明るい調子の花を入れるのも、また好ましい。ガーベラ、ダリア、バラなどよく調和する。私達はきものを選ぶ。生地のよしあし、色と図案、趣味のよしあし、私によく似合うかどうか、帯はどれにしよう、帯じめは、といろいろ考える。渋い水色のきものに紅の帯。白地のきものに緑と金色の帯。これと同じ様に、いけばなと花器について考えて欲しい。花器はいけばなの衣裳と云える。花がどんなによくても、花器の選び方が悪いと引立たない°幾度いけても、どんな花を入れてもよく引立つ花器がある。私の好きな花器と云うことになる。上品な趣味で、色がよくて、デザインの趣味もよく、そして手ざわりのよい花器、なんとなく新しい惑じの香う花器。そんな花器を使いたいものである。あんまりその人に似合わないのに私は茶色が好きだからと、頑張つて着るきもの。自分の個性を考えて選んで着るきもの。いろいろ人には考え方があるものですが—いけばなの場合は、折角、いける花のために、調和のよい花器を選んで下さい。衣裳はその裂の地質、図案、色調感覚、そしてもろもろの配合美。いけばなは、花材の趣味性質、色調、形の考案、感覚、そして花と花花器はいけばなの衣裳である4 |クリシロユリキクサトイモの花サンキライ

元のページ  ../index.html#84

このブックを見る