テキスト1964
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ハル鉢植の観葉植物「クロトン」を根洗いにして、剣山に留めた。水揚の悪い葉ものなので、根を切らないでそのまま使った。従つて少し深い花器を使って足もとの見えない様に注意した。黄色と緑と少し褐色ばんだ葉色が新鮮な惑じで美しい。かゆうの白花の美しいものを3本選んで、葉を一枚だけ赤えた。黄色と緑の配色が明るい感じを作り出している。花器は薄ずみ色に少し紫がかった水盤で横に長い形のものである。花器が横長である関係から、花型も自然、横並びに並んで、並列花型の形式をとつている。葉と葉の空間、花軸の美しい曲線の作る空間、これに注意をして、なんとなく新しいふんい気の出る様に考えつつ活けたが、色彩とあわせてこんな惑じが出ている様に思う。かゆうの3本の花の配列は、かなり技巧的で、一寸した苦心がひそんでいる。クロトンの前方へかぶる様に出た大ぎい葉は、大分、前方へ出ているので、この葉でかなり大味な惑じを出しているのだが、写真では中々わかりにくい。かゆうの葉を一本そえたのは、足もとを整えるためと、全体にアクセントをつけるためである。2 オミナエシ(女郎花)サワギキヨウ(沢桔梗)の二種盛花。サワギキョウーーリンドウの別称あり(原産アメリカ)キキヨウ科の多年生草本、山野の湿地に生え、高さ一メートル内外、葉は笹形、夏から秋にかけ鮮紫色の美しい唇形花をふさ状につける。(広辞苑)サワギキョウ(山梗菜)草木図説草部巻十七、第六十一版所載。池沢水辺ニアリ、旧根苗ヲ生ジ高六七尺、此草亜墨利加二多く産ス。ともに山の花である。この二種を挿し合せたが、全くよ3 2 サワギキヨウく調和する。以上の文章にある様に山の沢辺にある女郎花と沢桔梗が、草むらにある感覚が、この盛花であ沢桔梗ー—る。花器は長方形の深い花器を使ったが、自然にある様な心と、その中に秋の新鮮な感覚の出る様に注意して作った。盛花の技法として、二種とも長い材料を組み合せることは、面白い姿が作れる。ただ、なんとなく挿されている様な中に、茎と茎との配列や重なり、空間について、幾度となく考えて作った。花器の濃い褐色、紫の沢桔梗、女郎花の黄色、緑の葉の落着きのある配色である。オミナェシ(女郎花)久留米鶏頭(クルメケイトウ)タマシダ(玉羊歯)の3種盛花である。花器は白褐色の陶器で、これは貝から考案した花器であろう。中々面白い。この花器には軽い花が調和する。細く高い足との関係もあって、軽やかなすつきりした花がよいと思う。クルメケイトウは水揚がよく、葉もふつさりとして美しい°女郎花の淡紅、ケイトウの紫紅、少し紅を探えた葉、シダの緑など配色の美しい盛花である。これも花器が横長なので、自然、横列の花型となって、少し前方へ傾いているが大体において横にひろがった花型である。女郎花の細い茎の向うに、ケイトウの花2本を置き、花型の奥行きと浮きを作ってある。足もとはシダで調子をとつて、花器が少し高いので、垂れ葉を使って、花器の上へ重ねる様に、配色と形の上に注意した。背の高い花器の場合、足の高い花器の場合は、上方へ花が集まりやすく、下部が淋しく見えるから、下方の装飾のために、花や葉を少し下げて下部の「まもり」をすることが大切°女郎花の茎の空問について、変化のある配列をすることが大切。3 3 ーォミナエシオミナエシケイトウタマシダX X

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