テキスト1964
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の草木ー~山や野にある草木は、枝山や野原に自然に生えている草木、種をまかないのに天然に生えていることを「自然生」ーしぜんせいーと云う。その植物を自然生の植物と云う。自然生の草木桑原専渓ためとも百合、女郎花、すAき、りんどう、紅葉と考えて見ても、四季の自然生の材料を多く用いている。ことに、秋は自然生草木が最も美しい姿を見せる時期である。紅葉、黄葉、結実、落葉、その形と色彩は一年のうちで一ばん美しく、詩的な情趣をあらわす時期でもある。私達がいけばな材料として使う草木のうち、園庭で栽培の材料は、比私達のいけ較的、その形も定つており、活けやばな材料にはすい材料が多い。殊に園芸品種の草農園で栽培し花は殆どまつすぐな形で、統一された花と、それているのだが、これに反し、自然生と同時に、この自然生の草幹の形、蔓性のもの、草花にしても木を使うこと思いもよらぬ変った姿態をもつていが多い。いいるものが多い。かえれば、私例えば、松、としよう、つAじ、達のいけばなびわ、つばきの様な木ものは、一本は、自然生のごとに形が異り、同じ姿のものはな草木と栽培草ぃ。さんぎらい、むべ、あけび、山木とに依つて藤、つるもどきの様な性質のものは作られる、と殊に変化の多い姿をもつている。云うことになこれをいけばなにするとき、自然る。早春のすい生の変化のある、木や蔓やいばらの類を、どんなに花器におさめるかにせん、春蘭、ついて特別の苦心がいるものであやぶこうじのる。栽培の木ものは大体に活け易い。自然生の材料は花器に、どうにもお頃から、つAじ、しやくなさまらない足もと、表やら裏やらわげ、さA百合からない枝振り、さんきらいの様につるもどきの様に、からみ合って張りあってどこをどうとつていいのか解らない様な材料。こんな状態であるのが自然生の材料の特徴と云える。また、ここで考えて見る。いけばなは、色調と形とに依つて出来上るのだが、そのうちでも形を作ることが重要な部分を占めており、私達もこれについていろいろ工夫をする。花型は変ったものが面白い。ょぃ作品を作ろうとするには思い切った形を作ることが必要である。そのとき、平凡な枝振りの材料、温和な姿の材料では、どうにも変化のある姿のいけばなが作れない。自然生の材料はこんな時に役立つ材料と云える。どうにもならない様な癖のきつい枝振りは、変化のあるいけばなを作ることが出来る材料である°勿論、いけばな全体から云えば、こんな変化の多い草木のみが優れた材料だと云うのではないが、この様な好み方も、その中の「よきもの」の一っである。先日、私のけいこ場で(さんぎらい、白菊)の練習をした。どれも、実に難しい枝振りで、ときほぐすだけでも大変な姿のものが多かったがこの難ぶつの(いばら)を、よく整理して、花器に巧みに活けあげた瓶花は、全くよいお花となった。その際、私は「これは考え方と技巧の二つを完全に必要とする瓶花」だと話したが、自然生の材料にはこんな性質のものが多い。以上のお話は、花を習う人達が、その材料の中に(栽培の草木)(自然生の草木)の二つを、改めてはつきり定義づけて、その処置についての注意を促したいために述べた次第である。毎月1回発行桑原専慶流No. 24 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専躁流家元1964年10月発行いけばな

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