テキスト1964
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少しうす紅に紫ばんだ花。これは横(ムクゲ)の中でも珍らしい種類である。祇圏守り(ギオソマモリ)と云う品種の花である。ムクゲは薄紫と白花のものが多いが、この祇圏守りは、紅色と白色のものがあって、六月中旬より七月中に咲く。花も美しく水揚もよい。色ついたつぼみは花器の中.ても大きい花が咲く。写真は、切り子ガラスの花器(カットグラス)に挿した盛花。この花器は靱山がすべるので、花器に砂を3 入れ安定させた。ガラス器の光沢にムクゲの緑の葉、紅色の花がみづみづしく美しい。花形はムクゲの自然の形をそのまま花器に安定して、自由な形にのびやかに活けてある。ムクゲは―二輪を小さい花瓶に活けて、三尺床などに飾ると調和のよいものだが、また反対に、この盛花の様に大きく活けるのも、豊かな感じがして美しい。庭から切ってすぐ活ける程度の花材で、遠い所から持ち運ぶことの出来ない材料である。34 4 グラジオラスを四本、陶器の花瓶に活けた。すぐ写生して保存しておいた画であるが、色は上の花と、その次の花がピンク、下の左が紅色、下の右は紫の花である。大分以前に描いたものだが、花器の中へ砂を入れ郎山を置いて挿したものと思っ゜この図を見て面白いなーーと思ったのは、右方の留の位置の花て、葉が用いてない。満開の紫色のグラジオラスを、水からすぐ花を出してあるが、実際には、中々美しいし、姿もよい。葉を添忍ないところも変っている。つぼみては引立たないが花が咲いているので効果的てある。まっすぐなグラジオラスも、花が咲いたものは調子が変って見ス、少し考案すると案外、よい花が作れるものである。(想い出の画集から)(タメトモユリ)には、黄菊、グラジオラス、リンドウ、キキヨウ、ヤマナジ、ナッハゼ、フトイ、オミナエスをそれぞれあしらって、ニ種挿にすると調和がよい。(ツルモドキ)には、キキヨウ、キク、タメトモユリ、オニュリなどを添ゑ。また、ツルモドキ、ヤマナジニ種の様に木ものだけで活けるのも夏季の花としてふさわしい。(ムクゲ)は一種て活けるのがよい。小さい花器に小品花とするのがは、キキヨウ、ガソピ、女郎花など好もしい。他の花をつける場合にがよい。(グラジオラス)重た<派手な花であるから、一種挿が好ましい。ニ種の場合には、山ナジ、ナッハゼ、ユキヤナギ、カラジュームなど、花のない葉ものをつける。いけばなと云うものは大変、範囲の広いものです。日頃いけばなに関心をもたない人が、折にふれて壺に花を二三本つき挿したとします。これもすでにいけばななのです。ただ、これもいけばなてあるが、美術的な気持の殆ど少いいけばなと云うことになります。私達のやっているいけばなは、花を花器に入れるについて、美術的な考え方をあらわそうとする訳てす。先日、あるところ.て、座談会に出席しました。その院にある人が、心得がなくとも壺に花を挿せば、いけばなてはないかと云いました。私は「その様に考えられるところに、いけばなに対する誤解があるのです。例えば、三才四オの幼児の書いた字でも文字に違いありません。書道の大家の書く字も、これも文字です。一方は記号的なもので思いつき程度のものであるのに反し、一方は芸術としての書.てす。同じ一の文字.てもその内容が異ると思います。花を活けるのも、これと同じで、壺に花を挿せばいけばなだと考えるのは、少し意味が逢う様です。私達の花道は美術としての花を入れることを目的とする訳て、例えば大輪菊を一本、完全な姿に壺に活けるのに十年の練磨が必要なのです。これが三本となると五年の勉強て見事に活けられます。簡単だからすぐ活けられるだろうと思っのは、いけばなを知らない人だけが考えることです」いけばな答忍じた。配合例⑤ ムクゲ(ギオソマモリ)一種グラジオラス色を交えて一種挿

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