テキスト1964
52/104

株分け(かぶわけ)の盛花である。主材の株と根じめの株の二つに分けるのが初歩的な考え方なのだが、.練習をつむにつれて、左右の株が同じ力に、同じ大きさに活ける様にすると、花形も面白いものが作れる。中央に空間をあけて二株を両立させるのだが、あまりはっきり分けないて、両方の茎や葉が行き違って重なる様にすると、一層、復雑性が増し深い感じが得ゃれる。ここに作例二作をのせたが、これを基本として、更に考へ方を進められる様に希望する。花器はジソジヤ陶器の奥行十センチ程度の扁平な壺てある。暗い赤色と淡褐色。花はヤハズのカャとデージー、洋種アジサイ(赤紫)の三種配合である。ヤハズは段すすきとも云い若葉の新鮮なものを選んで三本、葉は左右にひろげて楽な調子に立てる。もっとあじさいの上にかぶさってもよいと思っ。左の主株(おもかぶ)の根じめにデージーを二本入れた。特に花の大きい茎のしっかりとした品種のものて.六月十日の今日の花としては珍りしい。ヤハズの後方ヘデージーを更に一本加Aて挿すのが普通だが、写真には復雑かと思ってやめたが、少し後方が淋しい。デージ一右方の子株(こかぶ)も主株と同じ様な力をもたせようと思って、高さも同様に高く挿したが、二株の場合に、この様に五対五の大きさを並列させると、中々よい調子の花が作れる。アジサイは洋種の赤紫の種類て、全体の配色はまことによい感じである。明る<上品な盛花となった。グラジオラスは紫。サンキライの黄緑の実。花器は少し黄ばんだ薄墨色。この盛花は配合はよいが活け方が少し堅い。株分けと云う考えにとらわれてサンキライが自由にのびておらない作品である。グラジオラスとサンキライは配合として申分のない、よい取合せなのサンキライ2 にのびやかさが足りないのは、型にはまると云う観念が、サソキライの持ち味を留めてしまった、と云える。こんな配合は自由な形に活けてこそ、ほんとうの味わいのある花となるに違いない。ともあれ、これも分体花型の一っの参考作品としてお見せする訳だが、この花型は右勝手の副主型て、サンキライは前方へ出る茎と、後方のグラジオラソの裏側から右方へ出た枝(写真.ては見えないが)とに依って花型の深みを作っている。分体花型を初めて習う人達はこんな形から入って行くといいと思います。全体の中央.て空間をとることが分体花型の特徴となっている。亡くなられた清水六和さんのお話。ある時あるところで、私は六和先生と若い陶芸家の人達と一緒に「花道と陶芸」に関するお話の会合をひらいた。そのとき六和氏の言葉。「大体、今の若い陶芸の人達は、そのものを作ることのみに熱中するが、それを使うと云う、エ芙の本質から考えて足りない所があるんぢやないか。例えば、菓子皿に絵付する場合に.菓子を置くと云うことを計算して絵を描かねばならない。」故舞踊家、伊藤道郎氏とさる某日、木屋町のある料亭.てお会いしたことがあった。そのときのお話。「日本の芸術をもっと大切にすべきだと思っ。アメリカのロックフエーラー家を訪れたことがあったが、丁度そのとき、曰本の香を楽しむ集りが催されて居った。夜のことだったが、何十階の上の一室て10名程の人が集って、室内和うす暗くして、中央のテーブルの上に香炉を置き、部屋の一方の天井から、スポットライトを香炉に向けて、細い光を投げかけていを香煙がゆらゆらと立ち登って、細い光の道をさえぎって登って行く。そのとき私似、日本の香煙がこの様に美しく、新しいアイデァて鑑賞出来ることを知って感心した、日本の古い芙術を、もっと新しし角度て考える必要かあるんぢやないでしようか。」分t体哀花かーよお話1. ヤノヽズアジサイ2. グラジオラスし)① 型ば

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る