テキスト1964
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ます。つば吾、八重咲の梅、もくれん、いよいよ春です。新鮮な春の花を活けましよう。庭の樹々の葉を、枝をよく見て御覧なさい。新しい春の色をたたえているではありませんか。三月に入ると枯木の様に見えた樹の枝にも、庭の隅の小さい草の葉ま.てなんとなく色めいて、美しく見えさんしゅう、雪柳、桃の花など、木の花が一せいに咲き出しますが、私達のいけばなには、平凡でない何か変った調子の材料を使いたいものです。梅に椿を添ス、桜になたねを根メにつけ、紫木蓮に白百合をつける様に、瓶花盛花には木ものに草花を配合するのが常識の様になっていますが、時々、これも反省して見ることが必要です。何故、木に草花をつけるのかと云うごしをです。勿論、調和がよいから配合するのですが、それがおきまりにならない様にしたいものですね。若芽のしだれ柳に八重桜をつけた2種配合、紅梅にゴムの葉、と云う様な配合の中に個性のある考え方が必要てす。枝と枝、花と葉、花と実、葉と葉と云う様に考えると、意外に面白い感興のあるいけ花が作れるものです。二月より四月までは四季の中でも立花(りつか)としては極めて小さい作品.てある。晋通の立花の大きさは六尺程度てあるから、この作品はその横に置いてある花鋏と比較して、随分小さいことがわかるだろう。私としてもこれ程小さい立花は始めての作品で、古い絵図や、実際にこれまで私の見た範囲.ては、こんな小さい立花はなかった。大きいとか小さいとかは、この立花の場合.量の問題だけ.てはなく、最も花材の壺かな季節てす。自然咲の花、温室の花、木の花、草の花など自由に選ぶことが出来ますが、それだけに何か異色のある配合をする様に考えたいものです。殊に盛花の場合は草花だけの二種。三種の配合は如何にも春りしい感じが作れます。春の花は色彩が豊か.てあり、特に緑の葉が美しい季節てすから二早花の緑を活かして、明るい調子に仕上げることが大切です。秋の花はしづかに落醤があり、春の花は明朗軽快でありたいものです若芽の柳、早咲のかきつばた、麦の穂、八重咲のつばき、ばいも、野菊などは季節感の深いもので、自然趣味の花と取合せて季節の詩情を味わうことが出来ます。なたねは段々、姿が悪くなり水揚もよくないか専渓作実際作成が難かしいし、材料の草木の大きさも目然に定っておること.てあるから、扱いにくい条件が加わって来る。小さく作りながら、その作品は大きい感覚と、ひろびろとした「のび」を見せねばならぬ訳てある。伝統的、古典的と云われる立花ても、この様に、これまてにない形を作って行こうとする創作態度がある。小さく作る中に新しい問題を処理して行くところに、開拓があると思つのである。伝統の形と技法を確に握って、その上に新しい思いをのべ様とするーー私はそんなことを考えながら、この立花を作った。ら、なたねは二月までの花と考えるのがよいてしよう。四月上旬までは材料の一ばん水揚のよい季節てす。追々暖かくなるにつれて、特に花器の水がいつも清りかである様に注意して下さい。次に好ましい花材を記しておきます。他にも多いのですが、その中.ても季節感の深い花材.てす。しだれ柳すかし百合うす紅梅ラッパ水仙ぼけの花かきつばたちやがらストックつばき紫フリヂヤカーネージョンゴムモンステラ雪柳黒百合紅梅スイトピーつげ紫アイリス春蘭ばら野菊菊各種かゆうばいも白百合沈丁花春の花を活けましよう小品立花① 毎月1回発行桑原専慶流No.17 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1964年3月獲行いけばな

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