テキスト1964
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ぼけ•ゼラニューム2 チューリップは紅色、アロカジャは濃い緑、型にはまらない自由な小品生花。にぶい黒色の花器に活けたが若々しい感じの生花と云えよう。ァロカジャとチューリップの葉の使い方が、生花の形を作っている。(右)軽やかな引きしまりのある生花である。花器は寸筒に二つの隆起をつけた清素な竹器(専渓好)副をやや長く出し留はゼラニュームの緑の葉て作ってある。軽やかな生花。(左)2 白いぼけの花、ゼラニュームの赤。ーー生花は流派に依って花形が違う。これが流儀花と云う語源にもなった訳だが、それぞれの流俵の代表的な花形(ごれがこの流儀の花形であると云う形)を活けることとなっているのだが、(ここに掲載した写真の中で、ばらん、菊2種、あかめ柳などは桑原専慶流の代表的な花形)それ以外に、変った花形や活け方がいろいろある。変った花形は(真行草のうちの草の花形)と云って、内副流し、副流し、胴流し、留流しなどの花形がある。以上は、花形そのものが変っているので、花器はその花形に調和するものを選ぶこととなる。ところが、今度はこれと反対に考えて花器の方から、この花器にはどんな花形を活けるかと考える場合も多い。生花は二00年にわたる永い歴史のうちに、最初は立花から出て素ぼくな感じ淡泊な趣味が喜ばれて、花形も単純な形から始まったのだが、年代がたっにつれてそれが追々と意匠的に工夫が重ねられ、花器も復雑になり、それに調和する生花の花型もいろいろぁうつ。変った形に作られるようになった。例えば、竹器も簡単なずんどう切りから、円窓、橋杭、かなえの様に意匠的なものが作られ、一重切、二重切、三重切筒、つる<び、二管筒三管筒、しののめ、車僧、と云う様な形の竹花器が作られ、それに調和する生花の活け方が工夫される様になり、花形自体も意匠的な装飾効果の多いものを考える様になった。普通の花形(写真、菊、ばらん、あかめ柳の様な)から花器の意匠に調子をあわせた様な花形を活ける様になり、それが段々と意匠と技巧に依って発展して来たが、やがてそれは爛熟より類廃の経過をたどり、生花の行きすぎた技巧意匠は、生花の本質的に優れた品位と、植物の自然と生花技法の詞和を失うこととなった。生花はあくまて日本の個性のほんとうのものを静かに持たねばならぬものであって、幽静、落着、端正優美な香り、その様なものを包みもつ花の芸術てある。従って、生花は意匠的に工夫の多い作品よりも、普通の平凡と見える形(行の形)がよい。その中になにより必要なことは近代的な香りをもつ作品てあることが望ましい。これまで生花として用いなかった様な花材と花器を使いこなして、生花本来の静かな感じの中に品位の高い生花を作りたいものである。古い生花ては用いる花材も何となく観念的に定っておる様に考えられたが、これからの生花は、花材も視野をひろげてもっと自由にどんな材料ても、生花に使う様な態度をもつことが必要て生花の花形チューリップ・アロカジャ

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