テキスト1963
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私達のいけばな材料の中には、「木もの」が多い。私達が大ざっぱに木ものと云うのは外見が木と見えるもので。それならば、ボタン、ユキャナギは木であるかと質問されると、とまどう人が多い。ヤブコウジ、チンチョウゲは木か草かと迷うに違いない。ここてはそんなことについてお話してみましよう。喬木(キョウボク)木は樹(たちき)であり、その中に喬木(きようぼく)と灌木(かんぼく)の二種類がある。「木」の字は喬木灌木の総称と云う訳である。喬木と云うのは、幹が木質て硬く直立して少くとも三メーター以上の木をキョウボクと云うこととなって桑原専渓いる。三メーター以上の木と云うと山の木から庭の木まで、マツ、スギ、モミ、カジ、サクラ、ウメ、ツバキの様に木の幹が相当登ってから枝の出る木もの、主幹と枝との区別がはっきりしているもの、これが喬木であって、またその中に濶葉樹(カッョウジュ)と針葉樹(ジソヨウジュ)とがある。カツヨウジュはサクラカジ、クリなどの様に葉の広い木で、ジンヨウジュはマツ、スギ、ヒノキ、モミなどの様に葉が針状又は鱗片状になっているものを云う。また落葉するもの常緑のものとの区別もある訳てある。(カンボク)灌木はバラ、ヤマブキ、ボタン、ナソテン、チャ、ッツジの様に丈が低く出生して、ニメートル以下の細い木質のもので、株もとから分れて登り主幹と側枝との区別がはっきりしない性質がある。ウノハナ、サン灌木キライ、センリョウ、ユキヤナギもこの灌木の中に入る。ャプコウジの様な短いものも灌木の中に入り、ミゾハギは木の中へも入り草の中へも入ることになっている。ミゾハギは出生する場所に依って木質のものがあり(山の水辺のもの)また草質のものもあるためてある。(河江などに自生するもの)私達の使う材料の中には、木とはっきぃ見えるものと、カンボク類の材料も大変多い。直接には関係のないことの様に見えるが、正しい知識をもつことが大切だと思っ゜私達がツルモノと云うものの中にも2種類ある。ツルが他の植物に巻きついて上へ登ろうとする種類と①上下の区別なく巻きついてのびるツルモノとの区別である。R上へ登る性質のものを攀縁植物(ハンエン)と云って、この中にはブ蔓もの(ツルモノ)ドウ、ッタ、ツルムラサキの様な種類がある。①横へひろがる性質の蔓は纏親植物(テンジョウ)と云って、この中にはアサガオ、フジ、スイカゾラ、クサフジ、ツルモドキの様な種類がある。②木もの(ボクモノ)木ものと書いてボクモノと云う場合がある。これも花道の特殊な用語.て花道だけ.て通用する言葉である。キモノは樹木全体を云い、ボクモノは木の中の太い木質の変化の多いものを云うことになっている。ボクとは木の中でも「ふしくれだち、または曲った樹木の古い根又は幹」の意味てある。例えばこのペーヂの写真にある様な木のかたまりのことを云う。或は松、梅、桜の様な太い木の幹の風情あるものをさして「ボクモノ」と云って、いけばな材料の中の一種類てある。通用もの(ツウヨウモノ)花道の古い書物を調べてみると、”「通用もの」と云う言葉が出て来る。その意味は木.てもなく草でもないと云う意味で、さきに述べた灌木類をさしている。さらに花道で通用ものと云う言葉をなぜ使ったかと云うと、古いいけばなの「立花」では―つの花型の中で、木と草とを用いる場所が定つており、この「通用もの」は木の場所でも草の場所でも、どちらへも用いられる便利のよい材料と云うことになっており、どちらへも使えるから「通用もの」と云う。うまく考えたものである。木もの(1) 毎月1回発行編集発行京都市中京区六角通烏丸西入樹のぼく,樹根の中には生物かと見える奇怪な形のものがある。この写真の造形は生命をもっかと思われる樹怪の力強さを作品としたものである。樹根を復雑に組み合せ彫刻し,下部には紙粘土を使って,その感じを強調している。(専淫作)樹怪桑原専慶流家元(造形)1963年12月獲行桑原専慶流No.14 いけばな

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