テキスト1963
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~ 花材•おくら紅ばら花器・暗朱色陶器 ヽ9月より12月初旬まての秋の花材について考えて見よう。といわゆる新秋の秋草の類が咲き出す。すすき、りんどう、山菊、はげいと、とりかぶと、女郎花、いった種類の秋草。菊も秋の初花が咲き出す。のジーズンで種類も増し菊の花色も葉色も豊かに咲き、その中に小菊や単弁の山菊が交って風趣を添える。秋の洋花は殆ど少いが、ダリア、カ秋花3題9月に入る野菊と10月に人るといよいよ菊ーネージョン、グラジオラス、ばらなどがその中の主たるものである。11月に入ると大輪菊の豊艶な花が咲き揃って菊の最も美しい季節となるが、品種も段々と変って来て深味のある色、変り咲きの中菊、小菊の類の珍種などが見られる様になり、特に感じられるのは晩秋の感じが、いろいろの花材を通じて身にしみて来る、すすき墜哀えて細り、赤く彩づく実ものはいよいよ冬近きを思わせる様に色づきはじめ、木の葉も褐色から紅に色を染めて行く。桜、牡丹、つつじの返り花が咲きはじめ木瓜の朱色の花が黄色い実を重たげにつけて咲く。落ついた風雅な姿てある。つばきが咲き出し水仙の花が見られる様になる。ふと気づくといつとなく冬に近ついて行くことを身近かの花々が教えて呉れる。10月より11月へと段々、葉の緑は褐色を交えてしっとりと落箸き、いづれを見ても雅趣幽静の感じが深々と感じられるこの頃てある。こごには、11月の季節の花3作をあげてお話しようと思っ。11月に入ると桜の返り花が咲く。俗に寒桜(かんざくら)と云う。年内に咲く返り花のぼたんを(寒牡丹)と云い、ばけを(寒木瓜)と云う。これは習慣的な呼び名てあるが、この寒桜も11月に入ると美しい白花が咲き次々と枝に咲いて殊に日持がよい。生花にも瓶花盛花にも風雅な材料てある。写真の瓶花は寒桜に濃い赤い大輪菊を2本添えて作ったが、菊は黒ずんだ程の大輪菊て葉もしっかりとしている。桜の枝振りのよいものを選んで真、副、胴と配置しT字留てしっかり留めた。菊は引き立つ様に長<挿し、真の後方へ1本、中間に1本と入れたが、桜のまばらな枝を通して見える深緑の葉と黒赤の花が美しい配色をつくっている。この様な細い線の主材と、葉のたっぷりとある限メの場合には材料を重ねて活けると遠近が浮き立つ様に見えてよい作品になる。ごのためには桜をずっと前へ出して根メの入れ易い様に作って置くことが必要てある。右方の中間の横に桜を一本入れ、右方からこ。f 見る場合の詞子を考える。この花器はやや背が高いから枝を下へおろして垂体の形をとり、上方は軽く下方は重く枝葉の配置をする様に考えおくらは畑て栽培される夏の実ものである。実は食料になるのだが、残念ながら私はまだ味ったことがない。夏は緑の実だがこの頃には褐色に変って風雅な姿が見られる。これに濃い赤色のばら3輪を添えて瓶花とした。花器は朱色に黒い上ぐすりが少しかかって明るい感じの2 2 壺てある。失色の壺に濃い赤のばら、深緑の葉、淡い褐色のおくらの実の配合である。落着いた感じの中に明るさの漂う瓶花。そんな調子のいけばなである。真、副、中間におくらを入れ胴、留、控にばらを3本入れた。基本型の中に悠かな調子の瓶花.てある。株もとをあまりしめつけないずゆったりと入れている。これにも注意して欲しい。この配合.て青磁の花瓶に入れてもよく調和する。しかし、青磁に入れる考え方は平凡な美しさを作るいけばな。朱色の壺に入れる考え方はより新鮮な感覚を作り出すことになると思っ。R •• 9,灸~ ッ.~~~ー花材・かんざくら大輪菊花器・土器様式花瓶

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