テキスト1963
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た3CJ私の家ヘアメリカ人がよくやって来る。例の如く花を活けて見せるのだが、中には日本のいけばなについて、すでに大体の概念をもっている人もあって、伝統の生花などを見せると「おお渋い」と笑い乍ら口を揃えて云う。以前はこんなことを云わなかったのだが、近頃は日本の花道がアメリカで怠砿行している関係もあって、日本の「渋い」と云う味を理解して来たの.てあろう。私達は渋い好みと云うと、あ4あれだなとすぐ解るのだが、実はこれも習慣的に解るのであって、に渋い好みとはどんなものだと問われて見ると、あらためて考えねばならぬことが多い。「渋い」と云う言葉は、あるもののもつ感じ、趣き、味わいをさす言葉.てある。あるものから受ける感じは賑かなもの、明るいもの、ものさびた感じ、落着のあるもの、またモダンな感じ、新鮮なもち味あるもの、種々な場合があるが、その中で「渋い好み」は落ついた深味のある味わい、例えば柿葉色の様なくすんだ趣のあるものを「渋い好み」と云う。明る<旅手やかなも釘に対照して、静けさ深い雅致と云った感じが、この「渋好み」と云う言葉にあてはまる°またこれが延長して、ものから人の性格を評する場合にも使われる様になる。あの人の趣味は渋いとか、枯淡な人格とがよく云う言葉てある、さて、これをいけばなの場合にあてはめて考えて見よう。先づ材料のもつ味わい、渋い感じの材料‘渋好みの配合、渋い色どり、茶花の様なひっそりとした雅趣のある挿け方、こんな場合に使われる。また、花器に対照して渋い好みの花器がある。生花(せいか)籍の投入などは概して渋い好みのものが多い。生花は近頃、明るい美しい材料を使うことが多くなったが伝統的なものは渋い雅趣を尊ぶ。生花投入の場合には材料、花器、花型など落著のあるものを選ぶ関係から出来上った作品は「渋いもち味」のあるいけばなが多具体的い。そして多くの種類のいけばなの中での―つの風格を作ることとなるのだがごれは「渋い好みの中の美しい生花,_と云える。外見の美々しさのみが美しいのではなくて、ごとの出来るいけばなは、感覚的に美しい作品と云える。更に考えて見ると、くすんだ渋好みだけてはなくて、その渋好みの中に近代的な新しさをもつごとが必要てあって、渋好みの中には新しい知的な香りが漂ういけばな、る。静かな中に深い味を見るそんな考え方が大切であヽヽ10月号テキストは休ませて頂きました阪田修、桑原寿結婚式のために10月は終始多忙を極めましたので、テキスト10月号は発行出来ません.てし勝手をいたしましてお赦し下さ9月発行のものが12号て、このテキストは13号C11月発行)です。この順序.てつづけて参ります。号数.ておあわせ下さい。なを、このテキストは作品写真文章など、すべて桑原専渓が責任をもって作い、編集をしています。挿花して写真をとり、原稿を書いて印刷所へ出すまで一週間印刷所.て15日問かかっています。皆様のお手許に送りせて、ほっとしておりますと、すでに次の号を書く日になっております。必ずよい写真を、皆様の勉強に役立つよいお話をと、毎号ごとに考えておりますが、走りまわる様な多忙な生活の中に書く原稿ですから中々思っ様に参りません。ただ、私自身、筆を走らせるとき、必ず一人一人の皆様が読ん.て頂く姿を頭において書いています。そして一人一人をお教えする心を常に忘れないてお話をつづけている訳てす。どうぞ皆様もそのおつもりでテキストを読んて下さい。そして、皆様のいけばなが進歩します様に、このテキストが役立つことを祈念しております。11月1日しぐれ降る朝桑原専渓桑原専渓@ 毎月1回発行編集発行京都市中京区六角通烏丸西入花材・ざくろ臼菊桑原専慶流家元花器・荒土金彩花瓶1963年11月痰行桑原専慶流No.13 いけばな好占渋こ

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