テキスト1963
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ー、草花が多く、体質の柔く弱いもずこれから考えて見ましよう。のが多い。2、夏の花の中には吸水力の弱いものが多い。3、夏草は盛んに土中から吸水するが、強い光線のためにすぐ水分を蒸発させてしまい、補給する力が弱い。4、むくげ、あさがお、はす、の様に短い時間のうちに、咲きしおれる性質の花が多く、それらの花は次々と花を咲き変えて行くことに特徴をもっており、一個の花が長時間も保つ性質のものではない。6、くちなしの様に花首の重たいものは、自然にある時はバラソスをとって生活しているが、切りとった場合には、木質のものは殊に吸水が難かしく、花首の重さと柔かさのために自ら首を垂れ、またそのために更に吸水を難しくする。これが萎れる原因となる。大輪咲のダリアなどもこれと同じことで、花首の重さと細い茎からの吸水では水分補給のバランスがとれないために早くしおれる、と云う訳てある。蓮の大葉、はげいとなどもこれと同意て、自分の頭の重さのために、吸水が充分.てないと自ら倒れ、また更に自ら吸水の道を塞ぐ結果となる。その他、多くの例がありますが、これ等の植物は自然に植生し、或は農圏に栽培されているとき、土より自らが適度に吸水し、1日だけ咲く花は1日だけの生命をもち、5日間ももつ花は、5日間の完全な吸水をしている訳てあります。また夏の花の一日の状態を考えて見ると、早朝冷涼の時間には草花は一せいに吸水し、花も葉もみづみづしい姿てあるのに、やがで日中になって強い太陽を受ける時間となるとあわれに萎れて、花も葉もだらりと見る陰もなくなりますが、陽の落ちる夕刻となると再び吸水力をとり返して隆々とした姿となります。ごの様にくり返して生活している植物は、土にあればこそてあって、一たん切り取った場合には条件がすっかり変って、自然の土から吸水すく、半減し、或は%の吸水も難かしると同じ様に吸水するもの.てはなごとになるに違いありません。従って土の生活ては5日間の生命ある花も、切れば2日しか持たないと云う結果が生れる訳てす。ことに夏の花は自然に咲いても、春秋の花の様に花期の永いもいは少く、二、三日で終り次から次へと花変えて行く性悟をもっています。例えば、すいれんの様に、新しい花を日毎に咲き変えて行くが、次い―日には水中から醤をもたげて新しい花を咲かせます。結局、夏の花は自然の吸水力.てせい一ぱいの生活をしている訳て、こんな弱い吸水力しが持たない花を切りとった場合、花器の水を吸わせてを詈長持ちさせることは中々難しいことであり、夏のいけばなの考え方も特別な考案が要る訳であります。夏でも日持ちのよい花夏ても日持ちのよい材料があ灼ます。例えばグラジオラス旦扇百合の類これらの材料を考えて見ると、花葉ともに頑強の性質のものが多く、また八月の菊の様に葉も黒々と青く、花もしっかりとしており、中には弁慶草の様に多肉の植物もあって、体質も強く水分補給が充分に行われるもの.てす。この様な材料はきびしい夏の日も水揚よく曰持ちがよいのですが、姿も色も頑強な感じで璽古しく、丈夫だが夏5材料としては一寸、しっこい感じがします。やさしい草花は日持が悪い暑い季節には清爽なあっさりとした花を活けたいのですが、この様な淡白なもいは柔い質のものが多く、日持が悪いと云うこととなり、中々うまく行かないもいです。材料の水揚と、私達の好みとが一致せない訳ですが、その中に、これをどうすればいい感じが作れるかと云うところに夏のいけばなの課題がある訳てす。ー、水揚の悪い花を少し.ても氷く保せること。百曰草弁慶草藤な.てしこ菊えぞ菊2、比較的、水揚がよくてしかも清爽淡泊な感じの花を選ぶこと。3、夏のいけ花らしい活け方の工夫をすること。4、清涼な感じの花器を選ぶこと、清りかな水を見る盛花。以上の様な点について、特別の配慮が要る訳てす。1本の花でも水揚のよい時期悪い時期がある堅いつぼみの頃と花が咲いてからとどちらが水揚がよいがと云いますと、これはどの花の埒合も咲いてからが水揚がよいのです。例えば、女郎花、桔梗、鬼た.て、ほざきななかまど、はげいと、などは、花のつぼみのとき、葉の若々しい時期よりも盛期になって花も葉もしっかりした頃の方が水揚がよい訳.てす。つぼみや若葉は柔かく形も悪く未完成の時期てあって体質が弱く、萎れる率が多い訳.てす。殊に、薄の葉、浜荻(はまおぎ)蓮(はす)河骨(こうぼね)などは葉のしっかり成長したものを選ん.て切りとらないと水揚に影響するものです。蓮や河骨は葉の分厚く濃緑の葉を選ぶこと、薄び葉は葉の分厚くみづみづしいものを選ぶこと、浜荻も同じ考え方が要ります。なを、水揚の難しい材料は、その1本1本の姿勢の正しいものを選ぶことも大切なこと*てす。曲った形のものはまっすぐな材料に比較すると水揚が悪く、活けてから影帯するも号につづく)のです。(次水みずあ揚グのお話花の日持が悪くなって来ました。折角、活けてもすぐ萎れることがあります。この頃の花は何故こんなに持たないの.てしよう。それを考えて見ようと思います。また、少しても永くもつ工夫を考えて見ましよう。いけ花には水揚(みずあげ)と云う言葉があります。水揚とは切り花に吸水する力を与えて日持をよくすることなのですが、花道と云い水揚法と云うと、何か特別に難かしい秘伝めいたことをする様に、一般に考えられ易いのですが、決して、そんな神秘的なものではありません。少し.ても切り花を永持する様に考えたり、よくもつ材料ともたない材料を織別して、持ちの悪い材料には特別の注意をはらうこと、又は、少しても永く持つ様に処理を加弓ることを云います。切ればすぐしおれる様な花を活けたり、ある時間しかもたない性質の花を無理に永持ちさせようと欲張ったりすることは正しいこと.てはありません。随って花道の水揚とは、先ず植物の性質を考えて、切りとった花を時間的に少しても長く保たそうとする、いわぱ消極的な延命策とてを云えましよう。夏の花は何故もたないか「暑くなると花がもたなくなる」先J⑥

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