テキスト1963
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4月に入ると桜、桃、れんぎよう、さんしゅう、雪柳、つばき、ぼけなどの自然の木の花が満開.てある。山の木の花も緑や褐色の花を咲かせて藪椿の朱色に交って咲き、春閾の花、ぼけの朱色など浅みどりの若葉の中に一斉に咲き揃う。桜の満開の頃の気候を考えてみると、好い時候と云ううちに早くも衣服も汗ばむ様な季節てあり、阿となくすがすがしいさっぱりとしたもの陽春4月桑原専渓の欲しくなる頃てある。この頃のいけばなは賑かな美しさよりも清素な感じのもの、派手な盛花よりも軽やかな投入、単純な感じの生花、殊に早くも咲き初めた水草類を材料として清爽な感じの花を活けるようにしたいもの.てある。桜、柳、つばきの満開の花などが至るところで目につく頃てもあり、更に部屋のいけばながしっこく賑かであることは趣味のいいものではない。その様な考え方を前提として四月の花を考えてみよう。四月の花材桜は生花の場合は一種挿がよい。四月に人ったならば遅ざくらの落著いた品種のものが好ましい。山桜の花の堅いもの、晩種の房桜の若葉の交った種類を一種挿にする。八重咲の派手な桜は一種挿に瓶花に入れるのも好ましい。桜に万年青の残果を添えて葉組する水盤の生花、これは古典花の伝花てあって華がなものとわびしい残花の配合はものさびた詩のある花といえよう。山桜に.やぶ椿は素ぼくな晩春の花であってジャガの葉を添えると更に風雅てある。木蓮い・中に紫黒色のからす木蓮と云う種類がある。緑の若築と赤黒色の花の配仁が―IKしい。いちはつの堅いつぼみを根メにつけるとよい瓶花盛花になる春の花木も一応.終りとなるが、晩春の庭の木にすおおがある。渋い赤味を帯びた、紫色の細花を沢山つけて咲くがさびた色の中に華かさがあり上品な花である。木の花が終ると雪柳、こでまり、さつき梅、利休梅、木いちご、の様な「かんぼく」の種類が咲き出す。雪柳は温室咲のものがよく自然咲になるとしっこく雅致に乏しい。むしろ花が終って青葉になってから用いるのがよい。木いちごは温室て若芽を出して二月頃から材料に用いているが、自然には四月末より白い花をつける。利休梅、さつき梅はよく似ているが花と葉が少し異っており、雪柳の様に垂れた姿のかん木出す。瓶花の材料として適当である。スイト。ヒーは枝花が少くなり、この季節になると蔓のみきを切りとって活ける様になる。形としては面白桜が終るといがす.てに残花の姿であり色もさえづ水揚もよくない。温室花の後始末の残物てあって新鮮さがない。季節の新しい花は、四月には杜若、野菊、いちはつ、ばいも、あつもり草、黒百合、乙女百合、すかし百合などがすがすがしい姿て見られる様になをいよいよ草花のジーズソのさきがけの花てある。四月か中勺頃になると春と初夏とのうつい変りの季節の花が見られる様になり、温室をはなれて自然に初夏の花が出て来る。かきつばたは栽培の品種は四月が盛季てあり、自然咲きのかきつばたは、五月がその季節である。かきつばたは一種挿がよく生花にも盛花にも一種挿がよい。瓶花にも寸筒の生花にも活けるが、やはりかきつばたは水盤生の方が感じがよい。挿の場合はカユウと合挿して盛花にするのもよく、五月に入ってなつはぜ(山木の新葉)と取合せるのも清爽な感じである。チューリップは新種の花が多く咲き出し、力',ネージョソは残花となって日持が悪くなる。フリージャは濃紫の花が美しく新鮮である。パ水仙は黄花よりも白花のものがさっぱりとしていい。青麦の穂を瓶花盛花に活けるのも季節感があってよいものである。青麦に野菊、紫花のフリージャなどの配合はやさしくすがすがしい感じの盛花材料である。朱ぼけ、麦、野菊といった取合せも美しい。ライラックの白花、紫花も明るい季節の花てある。2種ラッ四季の花材3① 毎月1回発行.て、四月下旬より五月へかけて咲き編集発行京都市中京区六角通烏丸西入④ さとざくら,ゴムの葉派手やかな桜をゴムの沿緑で引きしめている桑原専慶流家元桑原専慶流No. 7 いけばな1963年4月獲行

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