テキスト1963
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生花に用いる材料と云うと、昔から定った材料が多い。伝統の活け方が定っている関係上、明治時代に活けて居った材料も、この頃、活ける材料も同じ様なものが多い。生花は定った形のいけばなであるから、それに適した材料を選むと云う必要もあり、また草木の個性をあらわそうとする(出生)ことが、生花の―つの目的てある関係上、材料も日本草木の古い種類の材料が多く使われる。「えにしだ、伊吹、槙、行李柳、桜、梅、椿」の様ないわゆる枝ものや「ぱらん、紫苑、ぎぼうし」の様な広葉もの「杜若.菖蒲、水仙、おもと、しやが」の様な葉組もの「芍やく、ききよう、女郎花、菊」などの草花など、扱い方の系統があるが、大体において四季にある日本古来の花木や草花が多い。江戸末期より明治時代へかけて入って来た洋花「唐なでしこ、唐菖蒲、天子ぼたん」などの様な草花のほかに、最近は「グラジオラスの新種、アマリリス、アカジャ」などの様に生花を活ける花の種類も段々と変って来つつある。生花にも明るい感じの材料を使おうその江戸時代の花の種類と今日の花の種類が変って来るのは当然て、年々新しい花が見られる様になって来た反対に古い昔の花も段々見られなくなったものも相当にある。「淡紅色の花のある熊鷹蘭、三尺ばかりの白花弁慶草、四尺ばかりの吹上草」花も時代が変るにつれて見られない花が年毎にその数を増している。この様に材料自体が変って来るのだから、生花に用いる材料も追々と新しい花を用いることが必要である。「フリーヂャ、アイリス、ユー'カリ、モンステラ、ライラック、ストレチア、チューリップ、リークボール」この様な材料を生花の主材として用いたならば、面白い生花出来るに違いない。根メも美しい草花をつけて、明るい近代的な感じのある新鮮な生花を活けるべきだ。新しいデザインの水盤に「テッセンの紫花に赤色のカーネージヨン」を配合して生花を活ける。「紫花のフリーヂャに赤色カーネージョン2本の小品生花」「ストレチはにばら」こんな配合の生花を活けたならば、生花は伝統の花とは云芯ない様な明るい花が出来るだろう。花器もそれに調和した美しい花器を選ぶことが必要てある。生花の花器は定ったものでよいと云う様な考え方は訂正すべきである。1月15日、京都市左京区吉田の重森三玲氏邸広間の床に立花の具足飾をされて桑原専渓作の立花が三瓶対で立調された。今日、殆と行われることのない古式の床飾で珍らしいものなので、参考のために収録した。床の間は古来、家の中の最も尊ぶべきところとされている。は今日に於ても私達の生活の中に残っているが、をまつり祭祀の場所として用いられた。現在、私達は床の間に趣味の書画をかけ愛玩の装飾を飾り、丁度、洋室のマソトルピースの様に部屋の中心的な場所と云う程度に見方が変って来たが、形式が行われる様になった始めは、床の間の壁画に仏画を描きその前に花瓶を飾ったもの.てある。後代になその風習って壁画が巻きおさめることの出来昔はごの床の間に神仏仏教に依って床の問のる懸軸様式になり、更にその後、仏画から転じて趣味の書画をかけるまて長年月の変遷があったが、この写真に見る様な床飾は室町、桃山時代の形式てある。現在、床の閑に花を飾り香炉を置く形式はこり仏教の床の間荘厳(かざりつけ)の形が残存しているものである。具足飾(ぐそくかざり)という言葉がある。具足とは(充分そなわっていること)(主要な道具が揃っていること)の意味であって、ごの写真に見る様な床飾を具足飾とう。古式の形式を充分備えていると云う意味てある。仏壇の飾り遺具に五具足(ごぐそく)三具足(みつぐそく)と云う言葉がある。五具足は花瓶2、ろうそく立2本、香炉1で飾り付、三具足は花瓶1、ろうそく立1、香炉1で飾りつける。仏壇の飾り付と、この写真にある床飾りとは全然別のもの.てあって、床の間の具足飾りは古式とは云いながら趣味の床の間装飾のその創始時代の姿と云える。この様ないかめしい飾りつけから現代の床の間装飾へ変遷して来たものである。写真について解説する。軸は一幅であるが、雙幅ても三幅てもよい。或は五幅対(ごふくつい)と云う場合もある。左右に立花の対瓶を活け中央に中高の卓(しよく)を置き、その上に小立花一瓶、中央に香炉、右方に鶴亀のろうそく立を飾る。この形式が最も正しい古式の形であって、立花の具足飾りと云う。左右の立花は一対の花てあるが大きさは同じであっても二つの花型は異り材料もそれぞれ変ったものを用いることになっでい空左の花が松い真、右い花が梅てうけ、そえ、流技とも材料が異っている)-1行草の花型のうち草の対瓶と云う),5央の卓3立花は水仙に小菊た添え'に行の花型てある。この様な古式の床飾の行われるのは現今.重森先生釘みであることを思い尊敬に堪えない。⑧ 祐.具足飾

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