1962
6/27

「菊は白菊、そのほかの色はなくもがな」いい句です。切ってその感じがよく出ています。「すすき、かるかや、女郎花」これも秋になるといろいろな場合に用いられる花言葉です。その秋草の代表的な秋草、すすきかるかやについて思いつくまま挿花の話とりまじえて書いて見ましよう。すすきは漢字で書くと「薄」「茫」と書きかるかやは「刈萱」と書きます。すすきは尾花の出ない夏草の頃は「かや」と云い、には好んで用いますが、実用的には薄垣などと云って垣根の材料に用いられ、農村ては屋根をふく材料として用いられることもあります。かるかやはいね科の多年生草本で一、五メートル程度の草.て葉の細くやさしい姿をしています。穂は稲の様に垂れた形をしています。しかしごのかるかやも実用的には刷毛たわしの材料に用いられるそう.てすから兎角、現実となると厳しいものですすらりと云い秋のいけ花材料が、或はかるかやの枯穂て作った刷毛て糊をとくと云った情景も詩に通うかも知れません。私達がいけ花に用いる種類は、(すすき)青葉のすすき、しますすき、やはずのすすき(だんすすき)糸すすき、(かるかや)おかるかや、めかるかや、等がありますが、すすきの尾花の出ない夏の頃は青かや、しまかや、やはずのかや、などといいます。薄は秋草の中でも最も風情の深いものですが、さて花道の方から見るとその性質、形、他の材料との配合、活け方、水揚などについて考えねばならぬことがいろいろあります。すすきと一口に云っても山や河原のすすき、庭にあるすすき、田畑のあぜ道などにあるすすきなど、その出生している場所に依って姿が異るもの.てす。また水揚にも深い関係があります。すすきに限らずどんな花の材料でもそれぞれ出生している場所に依っていけばなの水揚に関係があるもの.て、例えば山のすすきと庭に植えてあるすすきとは水揚が違っし、畑の横に生えている様なすすきは殊に水揚のよいものです。に野生しているすすきは石土や砂まじりの土地に出生しているのですから、その姿は引きしまって葉も細くするどく生花には格好がよい訳ですが葉肉が薄く葉も細く、手ざわりもかさかさとして水揚の性質の悪いものてす。同じ川のすすきでも泥の推積した様な場所に生えているものは背も高<葉も大きくひろがってこれは水揚のよい種類です。庭に植えたすすき、これは葉も柔かく、畑のあぜ道にある様なすすきは近くの畑の肥料を頂載して出生しているものですから背も高く葉もざらりと大きくひろがり、格好は悪いが茎もしっかりと太く葉肉は厚く水分がたっぷりとしていますから水揚りがよい訳てす。また、しますすきすすき)の様に植栽の種類は葉も大きくひろがり生けにくい形のものですが、水揚は中々よい。従って私達がいけ花材料として用いる場合、最も水揚りのよいのは格好の悪いほど大きい葉のひろがったすすきがよいということになります。しかし生花の格好から考えるとこんな種類のすすきは形が悪く生けにくい訳てすから、そこて葉を少くするとか、大振りの花器を用いるとかして調子のよくなる様に工夫をします。やはずのすすきは植栽の種類ヤ山や川すが葉もよく引きしまって美しい姿のすすきです。水揚はよくない種類ですが、これも切りたての新しい材料であればよく水揚るものです。特に新鮮なものを用いる様にします。都会に居りますと、自分が足を運んで切って来ると云うことが出来にくく、大部分が花屋の材料.てありますから水揚には不充分てありますが、その中に新鮮なものを選んで買うことが大切てす。昔からすすきの生花を活けるときは、かなり背高く大きい花形を作りますが、以上の話の様に水揚のよい種類を選ぶと自然に花型が大きくなると云う訳なのです。そこで花器もどっしりとしたものを用い、根メは反対にしまりのある形に作って、ゅったりとしてしかも引きしまりのある花型を作る様に考えます随って小(たて縞のあるさい花器に小型のすすきのいけ花を生けることは、水揚の上から考えると中々難かしいことなのです。庭からすぐ花器へうつせる様な特別の場合は、細くしまったすすきも用いられる訳てすが、その他の場合は難かしいことと思います。盛花投入の場合も同じことです。朝か夕に自分が採集したすすき、これは理想的なのですが、すぐ切りロを水切りして更に熱湯て足もとを三分間ほど煮たき、すぐ冷水にうつします。熱楊の中に小量の酒又はしようちゅうを入れると一層効果があります。花屋のすすきは採集後、時間が経過しているものと考えねばなりませんから水揚は充分ではないが、足もとをすぐ水切りして同じく足元わ煮たきます。すすきの葉を出来るだけとり去って、その内のいい葉だけ残して活けます。葉が多いほど水揚に影響します。一本のすすきに五枚の葉よりも三枚の葉の方がすすきが吸水して葉先きまで水を配給するのに負担が軽い訳です。無駄な葉を出来るだけとり去ること、その方が生花の姿としてもすっきりとして軽やかな感じが出せます。盛花や投入の場合にはなおさら葉数少なくあっさりとしたすすきの感じを出します。賑かなすすきの生花は上手な考え方とは云えません。ひろがった大きなすすきはなおさらこの様な活け方が必要てす。すすきの若葉(夏の青かや)かるかやの若葉は水揚げの悪いもの.てす。八月中まだ暑さのきびしい頃のすすき葉は特に水揚に注意が要ります。すすきの類は九月に入って葉もしっかりしやや水揚もよくなります。これは他の秋草の類も同じですが、例えば秋海棠、た.て、はげいとなどもそれぞれの初花の頃は季節的にも暑いし、またその体質も充分かたまっていません。葉けいとうなども初期の頃は首をもたげ如何にも弱々しい姿てす。こんな時期には水揚の悪いのが普通てあり、よく成長した時期を見定めて切り採った材料はR すすきかるかや

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る