1962
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紅葉、黄葉とは晩秋になって木や草の葉がモミヂすることです。モミヂとは紅くなることだけてはありません。黄色くなることもモミヂすると云います。これは私達の常識でありますが、花を活ける私達には秋のモミヂはことに深い感じを受けるものです。一般の人達はモミヂと云えば、木の葉が紅に染まることだけだと考えられています。しかしいけばなの上では、もっと巾ひろく考えたいものです。紅葉‘黄葉とともに、更に復雑な木の葉の色が交わり、褐色や緑、赤に朱色、黄土色に黒ずんだ緑などの美しい自然の配色が、私達の目の前にあらわれて来るのですから、簡単に木の葉、草の葉と片附けられない訳て、いけばな.ては「葉の色彩」について考えねばならぬことが中々多いと思います。十月下旬より山の木の葉、街路樹の葉も色を変えて来ます。木や草のわくら葉は早くも黄ばんで落葉を始めるし、或は風に舞い落ちて私達に深み行く秋を知らせます。にしき黄菓なぎ、まるばの木、はぜ、まんさく、ます。草の葉の紅葉。これも美しくやさ木、どうだん、ななかまど、ゆきやかきの葉、かえての類、その他多くの木が紅に染って行きます。また一方、いちょうの黄葉の様に里の木も山の木も黄色に色を変えて、そのまま落葉するものも数かぎりなくありしく風雅なものです。すすき葉の紅葉、菊の紅葉、ねこじゃらしの葉、たんぽぽの葉、野菊の葉、いわかがみ。山道や川の畔に立って見ると、いろいろの草の葉が染めわけた様に緑と紅に彩っています。さて、私道は紅葉、黄葉をどんなにいけばなとして活ければいいの.てしよう。この頃の季節の材料として考斎見ましよう。先つ、紅葉した木の枝はどんなに美しくとも紅色だけてはつまらないもの.てす。時として、どうだんやにしき木など、真赤に葉が一色と見える程美しく紅葉したものがありますが、その枝の中に緑や黒ずんだ緑、或は緑葉に少し紅をさした葉、或は黄ばんだ葉が交っていると云った様に、色の変化があってこそ、紅葉が引き立つ訳てす。紅葉に何か花ものを添えて活ける。これは普通の考え方で大部分の配合がこれてす。まんさくの紅葉に白菊。大変いい調和てす。紅葉の雪柳に水仙。これもすっきりしている。この程度の配合は一般的な考え方で、無論、お花として無難ないい配合なのだが、もっとこれを研究的に考えて紅葉の情趣を深く感ずる様な取合をして見ては如何てしよう。まだまだ変った考王力があるかも知れません。そんな意味でここに数例をあげて見よう。皆様も瓶花盛花を活けるとき配合について研究して下さ、。、し>ー、同色配合の例題(花材)まんさく紅葉、紅苑゜まんさくは紅の葉、緑の葉、その中間色の葉もついている。菊はやゃ、大輪の一りん付の菊で紫赤色のものを選ぶ。さびた紫を交えた渋い赤の菊゜この配色はまんさくの朱色がかった赤、緑、黄葉などに対して菊の緑の葉、同じ赤系統ながら紫赤の菊の花。同色配合であるが、さびた色の例えば古い時代衣裳に見る様な落着いた美しさのある調和となる。(花材)山木の黄葉、淡黄の山菊゜雑木の枝でもよいが、黄ばんだ葉の色のさえたもの選ぶ。少し褐色が交り緑葉も残っている。枝の褐色が見えている。山菊は淡黄色の単弁小菊。菊の葉が新鮮な緑で美しい。この配合は黄色調の同色配合である。青磁色の花瓶に入れたならば美しいと思っ。2、木の葉、草の葉、実ものの(花材)紅葉つつじ、さんきらいの紅葉つつじとさんきらいはよく調和する。それ〈あまのかわと云う短い菊の葉を添えて瓶花とする。渋い花だが変った感じとなる。天の川を白単弁小菊と変えてもいい。(花材)山木の黄葉。黒いジュロのこれは盛花によい調和てある。(花材)まんさくの紅葉、柿の実つ(花材)山木の紅葉‘黄葉を交えて、これは少し大作となるが、面白い取合せである。以上の様な考王方は木ものの緑、黄、紅を交えて、それヘ花のない草を添えて変った誨子の作品を作ろうとするもの。大分池、い好みだが時として雅致野趣の感じが配合。(例)実。(色が交っている)天の川(菊の一種で花らしい花はなく緑の葉に白いくまどりのある珍種。)実。立ひかげ、き。つわぶきの葉(山ひらぎの葉)椿の美しい縁葉、さんきらいの赤い実、すすきの穂゜あっ.て、中々いいもの.てある。として都会向きによい)(花材)八ツ手の黄葉、リーガルリリーの実、ミリオクラタスの緑。これも同じ配色だが洋種の材料を使って大分、明るい感じになる。3、紅葉を使った小品盛花。(例)(花材)すいせん、岩かがみ紅葉。岩かがみは山の岩肌や山麓の砂地に野生する高さ10センチ程度のまる葉の草。11月より3月まで紅葉して美しい。小品盛花として美しい。(花材)菊の紅葉、バラ、春らん。寒菊その他、残花の菊の紅葉は風雅である。それヘバラの紅色の花、春らんを添えて活ける。4、洋花と紅葉は調和するか。(例)紅葉の趣味と洋花の鮮麗な色とは余りにも対照的て調和しにくいもの.てすが、その中での配合を考えて見ましよう。(花材)グラジオラスの紅色、柿又はまんさくの紅葉。(花材)テッポウユリ、柿又はまんさくの紅葉。(花材)カーネージョン、山木黄葉(主紅菓、⑥

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